pageTop

冷蔵倉庫における施設設備基準をご紹介します。

冷蔵倉庫における施設設備基準をご紹介します。

投稿日:2021.03.10 
更新日:2021.03.25 
お役立ち情報

インターネット通販でも、さまざまな食品が取り扱われるようになった昨今では、食品の品質を保ったまま安全に在庫を保管することができる『冷蔵倉庫』の重要性が高くなっています。

冷蔵倉庫は、現代の日常生活には欠かせない冷凍食品を始めとして、水産物や畜産物、農産品などの食品を中心に、それぞれの商品の特性に合わせて『+10℃以下の低温で保管する施設』の事を指しています。なお、冷蔵倉庫にも、保管温度帯による区分が存在しています。大きく分けると、保管温度が「+10℃以下~-20℃未満」の倉庫を『チルド級(C級)』と呼び、「-20℃以下」の倉庫は『フローズンまたはフリーズ(F級)』と
区分され、F級の倉庫は分かりやすいように『冷凍倉庫』などとも呼ばれています。
それでは、年々その重要性が高まっていると言われている『冷蔵倉庫』については、どのような施設設備基準が設けられているのでしょうか?これから、自社で冷蔵倉庫の新設を検討している方のため、冷蔵倉庫関連の法令をご紹介しておきたいと思います。

参考記事:Fact ism「冷蔵倉庫の基礎知識。冷蔵保管と冷凍保管の区分をおさえておこう

冷蔵倉庫の施設設備基準について

ここでは、冷蔵倉庫に関する施設設備基準をご紹介していきます。そもそも、日本国内で何らかの建築物を建てようと思えば、さまざまな法令に適合していなければいけません。例えば、一般の戸建て住宅を建築する場合も、建築基準法などの関係法令に適合しなければいけないのです。

それでは、一般住宅などとは比較にならないほどの規模となる、冷蔵倉庫を建設する場合、どのような施設設備基準が設けられているのでしょうか?ここでは、ポイントごとにおさえておきたい法令の条文をご紹介しておきます。

関係法令への適合性について

まずは、以下の関係法令へ適合している必要があります。

建築基準法(告第2条第4号イ)

特殊建築物に該当する倉庫として使用される部分の面積が100㎡以上の建築物その他建築基準法第6条第1項各号に該当する倉庫については、建築基準法の規定(建築基準法第6条第1項の建築基準関係規定(後述)を含む。)に適合していることを要する。
参照:倉庫業法施行規則等運用方針

建築基準関係規定(告第2条第4号ロ)

建築基準法第6条第1項各号に該当しない倉庫については、建築基準法第6条第1項の建築基準関係規定のうち以下に掲げるものに適合していることを要する。
(1) 消防法第17条第1項
倉庫は、消防法上防火対象物とされているため、消防法第17条第1項に定める技術上の基準に従って、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設を設置し、及び維持することを要する。
(2) 港湾法第40条第1項
港湾法第39条第1項の規定に基づき港湾管理者が分区を設定している地域に設けられる倉庫にあっては、同条第40条第1項の規定により当該分区の用途に適合していることを要する。
(3) 都市計画法第29条第1項又は第2項
都市計画区域等に設けられる倉庫にあっては、都市計画法第29条第1項又は第2項に規定するところによりその建築に際し開発許可を取得していることを要する。
参照:倉庫業法施行規則等運用方針

高圧ガス保安法(告第2条第4号ハ)

圧縮式冷凍機を使用している冷蔵倉庫にあっては、このような設備は高圧ガス保安法上の高圧ガスの製造施設に該当することから、その冷凍能力に応じ、同法第5条第1項の許可を取得していること又は同条第2項の届出をしていることを要する。
参照:倉庫業法施行規則等運用方針

食品衛生法(告第2条第4号ニ)

食品衛生法第4条第1号の食品を保管する冷蔵倉庫は、食品衛生法施行令第35条第17号の「食品の冷凍又は冷蔵業」に該当することから、当該営業に係る同法第52条第1項の許可を取得していることを要する。
参照:倉庫業法施行規則等運用方針

施設基準について

倉庫業法施行規則等運用方針では以下のように規定されています。

冷蔵倉庫は、一類倉庫の基準のうち、以下の基準を除いた全ての基準を満たしていなければならない(則第3条の11第2項第1号)。
イ 床の防湿措置(〔4〕2-5参照)
ロ 遮熱措置(〔4〕2-6参照)
ハ 耐火性能又は防火性能(〔3〕2-8参照)
ニ そ害の防止(〔4〕2-12参照)
引用:倉庫業法施行規則等運用方針

それぞれの基準も以下にご紹介しておきます。

床の防湿措置(則第3条の4第2項第4号)

一類倉庫の床については、土地からの水分の浸透及び床面の結露を防ぐため、以下のうちいずれかの措置が講じられていなければならない(告第5条)。
イ 床面にアスファルト舗装が施されていること(告第5条第1号)。
ロ 床がコンクリート造のものにあっては、コンクリートの下にポリエチレンフィルム等の防水シートが敷き詰められていること、又はコンクリートの表面に金ごて押え等により有効な防湿措置が講じられていること(告第5条第2号)。
ハ 床がコンクリート板敷又は煉瓦敷のものにあっては、有効な防湿措置が講じられていること(告第5条第3号)。
ニ 床が板敷のものにあっては、床組部分の通風のため、床下換気孔が設けられていること(告第5条第4号)。
ホ 前各号に掲げるもののほか、これらと同等以上に土地からの水分の浸透及び床面の結露の防止上有効な構造であると認められる措置が講じられていること(告第5条第5号)。
参照:倉庫業法施行規則等運用方針

遮熱措置(則第3条の4第2項第5号)

イ 「熱貫流率」とは、熱エネルギーが、ある壁を通して屋外から屋内へ伝わるときの「熱の伝わりやすさ」を表す数値であり、屋外と屋内の温度差1℃ごとに、1㎡の面積を1秒間に通過する熱量(単位:W)を表す数値である。この数値が小さいほど熱を伝えにくく、断熱性能の高い壁ということになる。
ロ 一類倉庫においては、遮熱のため屋根、外壁及び開口部の熱貫流率の平均値(以下「平均熱貫流率」という。)が4.65W/㎡・K以下となるように措置されていなければならない(告第6条)。ただし、以下の場合にあっては、上の基準に適合しているものとして取り扱うことができる。
(1) 当該倉庫が天井を有する場合
(2) 当該倉庫が建築基準法第2条第7号に規定する耐火構造又は同条第7号の2に規定する準耐火構造の屋根及び外壁(同条第9号の3ロの規定により、準耐火構造として認められる金属板一枚張りの屋根及び外壁にあっては、下地板を有するものに限る。)を有している場合。
(3) 当該倉庫が建築基準法第2条第8号に規定する防火構造の屋根及び外壁を有して
いる場合。ただし、以下に該当する倉庫にあっては、この限りではない
a 屋根又は外壁が単一の材料をもって作られている倉庫
b 屋根又は外壁が複数の材料をもって作られている倉庫であって、構造材の一部に金属板が使用されているもの
c 屋根又は外壁が複数の材料をもって作られている倉庫であって、その全てがセメント板系又は珪酸カルシウム板系であるもの
※ハ 以下参照資料でご確認ください。
ホ 上の計算方法によるほか、以下の場合に該当する倉庫にあっては、有効な遮熱措置がとられているものとして取り扱うことができる。
(1) メーカー、民間の建築士事務所その他の者の行った検査により当該倉庫の平均熱貫流率が4.65W/㎡・K以下であるものと認められる場合
(2) 換気扇、空調装置その他の排熱上一定の効果を有する設備の設置により、当該倉庫の平均熱貫流率を4.65W/㎡・K以下に抑えることができると認められる場合
参照:倉庫業法施行規則等運用方針

耐火性能又は防火性能(則第3条の4第2項第6号)

「耐火性能又は防火性能」を有する構造とは、以下のものを指す(告第7条)。
イ 建築基準法第2条第8号に定める防火構造であり、かつ、その外壁のうち同法第2条第6号に定める延焼の恐れのある部分に設けられた開口部に同法第2条第9号の2
ロに定める防火設備(防火戸に限る。)を有するもの
ロ 建築基準法第2条第9号の2に定める耐火建築物であるもの
ハ 建築基準法第2条第9号の3に定める準耐火建築物であるもの
参照:倉庫業法施行規則等運用方針

そ害の防止設備(則第3条の4第2項第11号)

「そ害の防止設備」とは、以下のものを指す(告第11条)。
イ 地窓及び下水管又は下水溝に通じる部分からの庫内への鼠の侵入を防止するために設けられた金網等の設備
ロ 出入口が、扉により密閉できない構造となっている場合にあっては、出入口の閉鎖時において当該出入口からの鼠の侵入を防ぐために設けられた鼠返し等の設備
参照:倉庫業法施行規則等運用方針

通報機の設置(則第3条の11第2項第2号)

冷蔵室内の要所には、冷蔵室内と外部との連絡のため通報機その他の設備が設けられていることを要する。
「通報機」とは、冷蔵室内に閉じ込められた者が外部に通報し、救助を求めるために冷蔵室内に備え付けられた非常ベル、電話機その他の設備を指し、当該冷蔵室の保管温度下においても作動する能力を有していること及び冷蔵室内が消灯されている場合において、閉じ込められた者が通報機の位置を認識できるように灯火が備え付けられていることを要する。

参照:倉庫業法施行規則等運用方針

保管温度の確保(則第3条の11第2項第3号)

冒頭でご紹介したように、冷蔵倉庫は、『+10℃以下の低温で保管する施設』の事を指しています。したがって、以下のような基準が設けられています。

冷蔵室の保管温度は、常時摂氏10℃以下に保たれているものとして以下の基準を満たしていることを要する。
引用:倉庫業法施行規則等運用方針

冷凍能力の基準(告第19条第1項第1号)

(1) 冷凍機の冷凍能力冷凍機の冷凍能力は、メーカーの仕様書の数値等を参考にして適切な方法により算出することとする。
(2) 熱損失(告第19条第2項)
「熱損失の合計」とは、次の各号に掲げる数式により算出された値の合計とする。なお、当該冷蔵倉庫が保管温度の異なる複数の冷蔵室から構成されている場合にあっては、それぞれの冷蔵室ごとに熱損失を算出し、その合計をもって当該冷蔵倉庫全体の熱損失量とする。
a 天井、床、外壁及び間仕切壁(以下「天井等」という。)の熱損失(告第19条第2項第1号)
b 受寄物を冷却するための熱損失(告第19条第2項第2号)
c 諸熱損失(告第19条第2項第3号)
d 凍結装置、製氷装置、準備室等のために必要な冷凍能力(告第19条第2項第4号)
a~dに掲げるものの他、当該冷蔵室と併用冷却される以下の設備(冷蔵室と同時に運転されるものに限る。)を有する場合にあっては、これらの設備の運転に要する冷凍能力を熱損失として計上することとする。なお、冷蔵室とこれらの設備を同時に運転することがない場合にあっては、これらの設備の運転に要する冷凍能力は、適宜減量して差し支えない。
① 凍結装置 日産冷凍能力1tにつき5790W
② 製氷装置 日産製氷能力1tにつき6760W
参照:倉庫業法施行規則等運用方針

冷却管の冷却面積の基準(告第19条第1項第2号

冷蔵室の冷却管の冷却面積は、当該冷蔵室に係る冷却面積以上であることを要する。加えて、間接膨張式の冷凍機の場合にあっては、ブライン冷却器に係る冷却管の冷却面積が、当該ブライン冷却器に係る所要冷却面積以上であることを要する。
(2) 冷却管の冷却面積(告第19条第1項第2号)
「冷却面積」とは、冷蔵室又はブライン冷却器内に設けられた冷却管の全表面積を指し、メーカーの仕様書の数値等を参考として、適切な方法により算出することとする。
(3) 所要冷却面積
a 冷蔵室に係る冷却面積(告第19条第3項)
b ブライン冷却器に係る冷却面積(告第19条第4項)
参照:倉庫業法施行規則等運用方針

その他(告第19条第5項)

・当該冷蔵倉庫に設けられた冷凍機を実際に稼動させ、冷却試験を行う
・自家用倉庫を営業倉庫に転用する場合において、現に使用している冷凍機の過去の温度記録を提出する
・メーカーの仕様書又は民間の検査機関による検査結果を提出する等の手段により、当該冷蔵室において盛夏時に所要の保管温度を維持する能力があることを証明できる場合にあっては、イ及びロの基準にかかわらず、則第3条の11第2項第3号の基準を満たすものとして取り扱うこととする。なお、圧縮式冷凍機を使用しない冷蔵倉庫の基準適合性を審査する際は、原則として上によることとする。
参照:倉庫業法施行規則等運用方針

温度計の設置(則第3条の11第2項第4号)

倉庫内においては、その室に応じて適当な数の温度計が見やすい場所に設けられていることを要する。
「温度計」とは、液体温度計、気体温度計等の温度を容易に計測する計器を指す。なお、事務所等において庫内の温度を集中管理している場合であって、庫内の温度が電光掲示板等により容易に確知できる場合にあっては、本基準を満たしているものとして取り扱うこととする。

参照:倉庫業法施行規則等運用方針

まとめ

今回は、冷蔵倉庫の施設設備基準について、倉庫業法施行規則等運用方針をもとに頭に入れておきたい情報をご紹介してきました。こういった法律は、少し分かりにくい表現も多いですので、何かご不明な点があれば、お気軽にお問い合わせください。

なお、冷蔵倉庫の施設設備基準については、倉庫業法施行規則等運用方針の「P.51~P.54」までに記載されています。ぜひ確認しておいてください。

TAG

もっと見る▼