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FSSC22000とは?物流関連企業が取得を目指す理由や取得によるメリットをご紹介

FSSC22000とは?物流関連企業が取得を目指す理由や取得によるメリットをご紹介

投稿日:2023.01.16 
更新日:2023.04.24 
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2018年6月に食品衛生法の改正が行われ、ここ数年は、HACCP義務化への対応が急がれていました。しかし、食品の安全を守るための仕組みについては、HACCP以外にもさまざまなものが存在しており、そのなかでもFSSC22000という国際規格を耳にする機会が増えていると思います。

FSSC22000は、世界規模で食品安全レベルを一定以上に確保することを目的とした認証システムですが、実際にどのようなシステムなのか詳しく知らないという方も多いようです。

また、FSSC22000は、食品製造に関わる企業だけでなく、保管や輸送を担う物流業界でも取得を目指す企業が増えています。

そこで当記事では、食品安全の国際規格「FSSC22000」とは何か、物流関連企業がFSSC22000を取得するメリットなどについても解説します。
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FSSC22000とは?

それではまず、FSSC22000について分かりやすく解説していきます。FSSC22000は、「Food Safety System Certification」の頭文字をとった略語で、日本語に直訳すると食品安全システム認証となります。

この規格は、ISO22000をベースに、ISO/TS 22002-1(またはISO/TS 22002-4)およびFSSC独自の追加要求事項が加わった国際規格で、悪意のある第三者による食品テロなど、予期せぬ食品事故などもカバーし、より確実な食品安全の実現を目指すものです。FSSC22000は品質ではなく、あくまで食品安全に特化した規格で、食品安全を推進する組織「GFSI(Global Food Safety Initiative:世界食品安全イニシアチブ)」のベンチマーク規格となっています。

参照:一般財団法人日本品質保証機構「FSSC 22000(食品安全)」より

FSSC22000の構成要素について

ここでFSSC22000の構成要素についても簡単にご紹介します。上述しているように、この規格は「ISO22000+ISO/TS22002(前提条件プログラム)+FSSC独自の追加要求事項」の3つで構成されています。以下でそれぞれの要素について簡単に解説します。
FSSC22000の構成要素

画像引用:一般財団法人日本品質保証機構「FSSC 22000(食品安全)」より

ISO22000(食品安全マネジメントシステム)

ISO22000は、「International Organization for Standardization(国際標準化機構)」が発行する食品安全に関する国際規格です。この規格は、フードチェーンに関与する全ての組織を対象としており、「消費者に安全な食品を提供することを目的とした食品安全マネジメントシステムの確立」が主な狙いになります。

ISO/TS22002(前提条件プログラム)

ISO/TS22002(前提条件プログラム)は、食品に関わる事業者向けの前提条件プログラムの国際規格です。この規格は、シリーズ化されていて、現在は6種類のカテゴリに分類され、それぞれの仕様書が作成されています。前提条件プログラムは、食品安全衛生においてハザード管理をするための前提となるルールのことで、ハザード管理をきちんと機能させるために「大前提として行わなければならない」ことを指しています。

例えば、食品の製造現場などで考えた場合、ゾーニングがきちんとなされている、衛生設備が整えられている、5S活動や7S活動が取り入れられているなどと言った内容が決められています。

なお、ISO22000でも前提条件プログラムに関する要求事項が含まれています。しかし、ISO22000では具体的な内容が定められていないため、これを補強するための規格と言った立ち位置になります。

FSSC独自の追加要求事項

FSSC独自の追加要求事項は、ISO22000では考慮されていなかった部分を補強するもので、大規模な食品事故の発生などをきっかけとして、その時代の食品安全ニーズに合わせたものに随時アップデートされていくという特徴があります。

そもそも、ISO22000では、食品製造現場で働く従業員やフードチェーンに関わる関係者は、全員悪意のない者ということが前提となって機能します。したがって、悪意のある人間が食品に毒物を混入する、会社ぐるみで食品偽装を行うといったことを防ぐことができない仕組みになっています。

これが、FSSC22000では、悪意のある第三者による食品テロや食品偽装、アレルゲン管理などの追加要求事項を設定し、今まで想定していなかった食品事故まで防げるような仕組みの規格になっています。以下に、2020年11月に発行された最新版の追加要求事項をご紹介します。

  • 2.5.1 サービスの管理及び購買材料
  • 2.5.2 製品のラベリング
  • 2.5.3 食品防御
  • 2.5.4 食品偽装の軽減
  • 2.5.5 ロゴの使用
  • 2.5.6 アレルゲン管理(フードチェーンカテゴリC,E,FⅠ,G,I&K)
  • 2.5.7 環境モニタリング(フードチェーンカテゴリC,I&K)
  • 2.5.8 製品の処方(フードチェーンカテゴリD)
  • 2.5.9 輸送及び配達(フードチェーンカテゴリFⅠ)
  • 2.5.10 保管及び倉庫管理(全てのフードチェーンカテゴリ)
  • 2.5.11 交差汚染を防止するためのハザード管理及び分析(フードチェーンカテゴリC及びI)
  • 2.5.12 PRP検証(フードチェーンカテゴリC,D,G,I,K)
  • 2.5.13 製品開発(フードチェーンカテゴリC,D,E,F,I,K)
  • 2.5.14 健康状態(フードチェーンカテゴリD)
  • 2.5.15 マルチサイト認証を有する組織の要求事項(フードチェーンカテゴリA,E,FⅠ,G)

追加要求事項の内容については、以下の資料をご確認ください。

参考資料:FSSC 22000 SCHEME VERSION 5.1

FSSC22000の取得を目指す企業が増えている?

2023年1月時点でFSSC22000認証を取得している日本企業は3,129件となっています。世界全体での認証取得件数が、30,905件ですので、日本企業の取得率は全体の10%を超えており、この国際規格が日本国内でどれだけ注目されているのかよくわかります。さらにここにきて、日本国内では、食品製造に携わる企業だけでなく、配送や保管を担う物流関連企業がFSSC22000の取得を目指すケースが多くなっているようです。

2022年9月には、福岡県の3温度帯物流を主力としている物流企業がFSSC22000を取得しており、配送を含めた同認証の取得は国内で2例目と発表されています。

昨今の食品物流を取り巻く環境は、コールドチェーン(低温物流網)の拡大やECでの食品の取扱いの急拡大などがあり、食品の安全を担保するためには、製造や加工工程のみならず、流通を含めたフードチェーン全体での取り組みが重要とされています。食品物流においては、「品質が第一」と言われていますが、物流における品質管理の過程はなかなか目に見えない部分となります。

そのため、FSSC22000など、国際的な認証規格を取得することで、自社の食品物流への取り組みが荷主企業から見えるようになり、より一層深い信頼関係を築けるのではないかと考えている企業様が増えているのでしょう。

参照:認証機関一覧について

関連記事:フードディフェンスの重要性と基本的な考え方

FSSC22000取得のメリット

ここでは、FSSC22000を取得することによって得られるメリットと、取得する前に検討すべき注意点をご紹介します。

 

国際規格であるFSSC22000は、海外の顧客と取り引きする場合にこの認証を取得していることが条件になっていたり、最近では国内の大手企業と取り引きする場合に取得を求められるケースが多くなっていると言われています。この認証を取得することで、以下のようなメリットがあると考えられます。

  • 従業員の食の安全・安心・信頼への意識が向上する
  • 顧客・取引先の取引要件を満たすことができる
  • 対外的なアピールになり、顧客からの信頼が得られる
  • フードディフェンス(食品防御)、フードフラウド(食品偽装)への対応が強化できる
  • 予期しない食品事故を防げる(減らせる)
  • 業務効率の改善や組織体制の強化ができる

FSSC22000は、フードディフェンスやフードフラウドまで含まれた認証規格となるため、今まで以上に食の安全・安心・信頼を顧客に提供することができるという点が非常に大きなメリットになります。また、認証を取得することで国際的に大きな信用を得ることができます。そのため、海外への進出を目指している場合は、「取得すべき」と言えるかもしれません。

FSSC22000取得の注意点

FSSC22000の取得を検討している場合、以下の点に注意しましょう。

  • 認証取得のために多くのリソースを要す
  • 認証取得や更新のためにコストがかかる
  • 追加要求事項の改訂が他の認証と比較するとかなり多い

FSSC22000認証の取得には、400以上もの規格要求事項を満たさなければいけません。施設の改修や新たな設備の導入など、多額の設備費用をかけなければならない場合もあります。上述した、福岡の物流企業でも、認証取得に際して、施設の全面メンテナンスに取り組んだうえ、建物の劣化や汚れなどについては、隅々まで修理を行ったとしています。

この他にも、施設内の防塵対策のため駐車場の再舗装や冷蔵倉庫の機能拡張など、FSSC22000取得のため、多額の設備投資を行ったとしています。なお、FSSC22000は、認証を取得するための費用や更新にも費用がかかりますので、コスト面については慎重な検討が必要です。

また、FSSC22000は、その他の認証規格と比較すると、要求事項の改訂が頻繁に行われるという点も注意が必要です。

この規格を承認しているGFSIは、何らかの重大食品事故が発生した場合、それに対応できるようにGFSI独自の食品安全に関する要求事項の改訂を行います。そしてFSSC22000も、GFSIの要求事項との同等性を維持するために、FSSC22000の要求事項を改定するという流れになります。

ISO規格などについては、一般的に約8年単位をめどとして改訂が行われるのに対し、FSSC22000は1年や2年で追加要求事項が変わることも珍しくありません。つまり、FSSC22000を取得した企業は、改訂に合わせてその都度自社のマネジメントシステムをアップデートしていく必要があるという点は要注意です。

※FSSC22000の要求事項が改訂された時は、次回審査までに対応すれば問題ありません。

まとめ

今回は、食品の安全を守るための国際認証規格FSSC22000とは、どのような内容の認証規格なのか、また導入した場合に得られるメリットなどについて解説しました。食品の安全を守るための仕組みについては、HACCPやISO22000など、さまざまな認証規格が存在しています。日本国内では、食品衛生法の改正により、全ての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務化されたこともあり、「食品の安全を守る仕組み=HACCP」というイメージを持つ方も多いと思います。

しかし、この記事でご紹介したように、HACCPやISO22000は、悪意のある第三者の存在などを考慮していないため、どうしても防ぐことができない食品事故が存在します。

FSSC22000は、ISO22000をベースとし、さらに確実な食品安全を実現するため、フードディフェンス(食品防御)やフードフラウド(食品偽装)への対応まで想定した認証規格になっています。したがって、ISO22000と比較しても、より厳格な運用が求められるのですが、しっかりと運用することができれば、非常に高いレベルの食品安全を実現することができ、対外的な信用度向上を目指すことができるでしょう。

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