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危険物倉庫とは?建設する際の基準と押さえておくべき法令をご紹介

危険物倉庫とは?建設する際の基準と押さえておくべき法令をご紹介

投稿日:2019.08.02 
更新日:2024.03.22 
お役立ち情報

今回は、倉庫の中でも『危険物倉庫』にスポットを当て、危険物倉庫とはどのようなものを指すのかについてご紹介します。
一般的に、倉庫とはお客様の大切な製品を一時保存する場所で、どのような物品でもスペースさえあれば、保管して良いと思われる方も少なくないでしょう。しかし、保管するものによっては、火災や爆発、有毒ガスの排出等、災害につながる危険性がある物質も存在します。
例えば、ガソリンなどの石油製品は、取り扱いを一つ間違っただけで大きな火災事故に発展してしまう危険性があり、一般環境で大量に取り扱うことは法律で禁止されています。そういった危険性のあるものを保管するためには特別な許可を得る必要があるのです。そして、これらの危険な物質は、重大な火災や災害を引き起こさないため、保管する際には建物の構造や基準が厳しく定められています。
つまり、上記のような危険な物質を大量に保管する倉庫が『危険物倉庫』と呼ばれ、保管する場合には、危険物倉庫に関する正しい知識を持っておかなければいけません。そこで今回は、さまざまな危険物や、危険物倉庫に関する基礎知識をご紹介します。

危険物倉庫建設における課題解決事例集を無料でお届けいたします。

危険物とは?

まずは、「危険物とはどのような物を指すのか?」についてご紹介します。危険物を正しく取り扱うことを考えた場合、「危険物とは何か?」ということについては詳しく把握しておかなければいけません。
一般的に、「危険物とは?」と聞かれると、毒薬や劇物をイメージする人が多いかもしれません。しかし、工場や倉庫の運営において、危険物として取り扱われる物質は消防法によって定められています。

消防法第2条第7項
危険物とは、別表第1の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。
引用:消防庁資料より

消防法は、危険物の取り扱いや保管方法が定められている法律で、危険物の定義に関しては、上述のように記載されています。日本における危険物とは、通常の状態で保管・放置しておくと、引火性・発火性があり、火災や爆発、中毒などの災害につながる危険がある物質のこと。
それでは以下に、消防法に定められている危険物について種類別にご紹介します。

消防法に定められている危険物倉庫に保管できる危険物

種別 性質
第1類 酸化性固体
他の物質を強く酸化させる性質があり、可燃性と混合したときに、『熱・衝撃・摩擦』により、きわめて激しい燃焼を起こさせる。
(1) 塩素酸塩類、(2) 過塩素酸塩類、、(3) 無機過酸化物、(4) 亜塩素酸塩類、(5) 臭素酸塩類、(6) 硝酸塩類、(7) よう素酸塩類、(8) 過マンガン酸塩類、(9) 重クロム酸塩類…など
第2類 可燃性固体
それ自体が燃えやすい、もしくは40度未満などの低温でも引火しやすい性質がある。
(1) 硫化りん、(2) 赤りん、(3) 硫黄、(4) 鉄粉、(5) 金属粉、(6) マグネシウム…など
第3類 自然発火性物質および禁水性物質
空気、水に触れることで発火もしくは可燃性のガスを発生させる性質がある。
(1) カリウム、(2) ナトリウム、(3) アルキルアルミニウム、(4) アルキルリチウム、(5) 黄りん…など
第4類 引火性液体
燃えやすい液体のこと。
(1) 特殊引火物、(2) 第一石油類、(3) アルコール類、(4) 第二石油類、(5) 第三石油類、(6) 第四石油類、(7) 動植物油類…など
第5類 自己反応性物質
加熱分解などによって爆発の恐れがある固体や液体。通常、物が燃焼するには酸素が必要ですが、このカテゴリーの物質は分子内に酸素を含んでおり、空気に触れなくても燃焼が進む。
(1) 有機過酸化物、(2) 硝酸エステル類、(3) ニトロ化合物、(4) ニトロソ化合物、(5) アゾ化合物、(6) ジアゾ化合物…など
第6類 酸化性液体
第一類と同様に、他の物質の燃焼を促進させる性質をもつ。刺激臭を有する物質が多い。
(1) 過塩素酸、(2) 過酸化水素、(3) 硝酸…など

参考資料:消 防 法 令 抜 粋(消防法上の危険物の定義、試験方法など)

なお、第1類から第6類の危険物は消防法に基づく定義に従っていることに加え、市町村の条例で規定される「指定可燃物」などの別の項目にも留意する必要があります。

危険物倉庫とは?

それでは次に、危険物倉庫について、基礎的なことからご紹介します。危険物倉庫は、その名前からも分かるように、『危険物』と定められているものを保管するための施設を指しています。なお、この基準となる法律は『消防法』によって定められており、法文中には、危険物を取り扱う施設について、その詳細が定義されています。

危険物を取り扱う施設

危険物を取り扱うことができる施設は、大きく分けて3種類あるので、以下を覚えておきましょう。

  • 危険物を製造するための施設となる『製造所』
  • 大きな指定倍数で危険物を取り扱う『貯蔵所』
  • ガソリンスタンドなど、危険物を小さい指定倍数で扱う『取扱所』
    ※ガソリンスタンドは「給油取扱所」、危険物を販売する施設は「販売取扱所」、危険物を送るパイプラインなどは「移送取扱所」と呼ばれます。

危険物を取り扱う施設は、上記のように分かれており、この中でも危険物倉庫は2つ目の『貯蔵所』に該当するものとなります。
なお、危険物を取り扱う倉庫を使用するには、法律に従って施設の設備を整え、人員を整備する必要があります。また、そのうえで、消防庁もしくは他の定められた機関に各種申請などを行い、許可を得なければならず、その他、各市町村によって条例や規則が設けられているなど、専門的な知識や行政との協議が必要になりますので容易ではありません。
ただ、そういった厳密なルールが定められている理由は、危険物は火災の原因にもなりうるため、人命に強くかかわるからです。事故を未然に防ぐにも危険物を取り扱う際には、専門家からのアドバイスは必須といえます。危険物倉庫建設の際は必ず専門業者にご相談ください。

また、危険物倉庫と似ている設備に危険物貯蔵庫があります。少量の危険物を保管したい場合はユニット型の貯蔵庫でも対応が可能です。
しかし、少量だからといっても、危険物を保管すことには変わりありませんので法令に準じて必要な設備を装備する必要があります。また、指定数量にも注意が必要です。

※指定数量とは、消防法第9条の4によれば、「危険物の危険性を考慮して政令で規定された量」を指します。この指定数量は、危険物の種類によって異なり、危険物の保管量を危険物の指定数量で割った「指定数量の倍数」によって判断されます。もし指定数量の倍数が「指定数量の1倍以上」に相当する場合、消防法による規制対象となります。

危険物倉庫建設に関するお問い合わせはこちら

危険物屋内貯蔵所の設置許可申請フローとは?

通常、危険物倉庫は建設時に以下の手順に従って許可申請が進み、使用が開始される流れとなります。

1.所轄消防と事前協議を実施する。
2.危険物倉庫を設置する市区町村に危険物屋内貯蔵所の設置許可を申請する。
3.許可申請が適切であれば、設置許可証を受領し、工事を開始する。
※市町村によっては着工前の許可申請が求められないケースもありますが、着工後の指摘による設計変更を防ぐためにも許可後の着工をお勧めします。
4.必要に応じて工事の中間検査を行う。
5.危険物倉庫が完成したら、完成検査の申請をし、検査が実施される。
6.検査結果に問題がなければ、完成検査証を受領する。
※別途工事でラックの設置などがある場合はラック設置後の検査となります。

危険物倉庫を建設する際の基準

消防法で定められた危険物倉庫建設の基準には大きく分けて以下の項目があります。

■危険物倉庫建設の際の規模や構造の基準
・軒高:6m未満で平屋であること
・床面積:1000㎡以下であること
・屋根:軽量金属板等の不燃材料を用いること
・壁や梁:耐火構造であること
・床:耐火構造であること
・窓:網入りガラスにすること
・窓や出入り口には防火設備を設けること
・床面に水が侵入・浸透しない構造にすること

■危険物倉庫建設の際の設備の基準
・避雷設備の設置 (指定数量が10倍以上の場合)
・蒸気排出設備の設置 (引火点70℃以内の危険物)
・危険物の取扱いに必要な明るさ・採光の確保

■危険物倉庫建設の際の位置の基準
・保安対象物に応じた保安距離を確保すること

保安距離は、特定の施設や設備の周囲において、
安全を確保するために確保される必要のある一定の距離を指します。

・住居として使用される建築物および工作物(製造所の敷地を除く):10m以上
・学校、病院、劇場その他多数の人を収容する施設で、総務省令で定めるもの:30m以上
・重要文化財、重要有形民俗文化財、史跡もしくは重要な文化財として指定された建造物や、重要美術品として認定された建造物など:50m以上
・高圧ガスや他の災害を引き起こす可能性のある物を貯蔵または取り扱う施設で、総務省令で定められた距離に従う
・特別高圧架空電線(使用電圧が7,000V超、35,000V以下):水平距離3m以上
・特別高圧架空電線(使用電圧が35,000Vを超):水平距離5m以上
参考:危険物の規制に関する政令|e-GOV法令検索

・危険物の指定数量倍数に応じた保有空地を確保すること

■壁・柱および床が耐火構造の空地

指定数量の倍数5以下:0m
指定数量の倍数5以上10以下:1m以上
指定数量の倍数10以上20以下:2m以上
指定数量の倍数20以上150以下:3m以上
指定数量の倍数50以上200以下:5m以上
指定数量の倍数200以上:10m以上

■壁・柱および床が耐火構造以外の場合の空地の幅

指定数量の倍数5以下:0.5m以上
指定数量の倍数5以上10以下:1.5m以上
指定数量の倍数10以上20以下:3m以上
指定数量の倍数20以上150以下:5m以上
指定数量の倍数50以上200以下:10m以上
指定数量の倍数200以上:15m以上

参考:総務省消防庁

【関連記事】
『保有空地』と『保安距離』とは?危険物取り扱いの基礎知識

これ以外にも危険物倉庫を建設する際には「建築基準法」「危険物の規則に関する政令」「火災予防条例」など様々な専門的で複雑な法令を理解しておく必要があります。また、全ての専門知識を理解したうえでも危険物関連の法令の運輸においては行政庁の指導内容に幅がありますので様々な面での知識と経験が必要になります。

危険物倉庫建設の計画・設計段階でしっかりと行政指導の主旨や倉庫の特性を理解していなければ、法令の主旨にそぐわない危険物倉庫ができてしまう事になります。

なお、法律で制約されているものだけでなく、各自治体が定める条例によって変わりますので、各自治体で定める条例もあわせて確認しましょう。

危険物倉庫の設計に関する届出・法令

危険物倉庫を建設する際には、様々な法令で制約がございます。また取扱危険物にあわせて届出書類や監督官庁が異なるため正確に把握していないと、知らぬ間に法律違反を犯してしまう可能性もあります。
こちらでは、危険物倉庫の設計に関わる法令についてご紹介致します。

都市計画法

用途地域や臨港地区など、危険物の製造や貯蔵を規制している地域地区を定義しているが、具体的な規制は別の法令で規定している。

建築基準法

危険物の製造や貯蔵量を用途地域で規制している。因みに規制の無い用途地域の方が少なく、工業地域と工業専用地域のみ規制がない。

消防法

危険物を定義し、指定数量以上の危険物の貯蔵及び取扱いの制限等を設けている。指定数量未満の危険物の貯蔵や取り扱いについては火災予防条例等の市町村の条例で制限を設けている。なお、消防法の中では大まかな規定しかされておらず、細かなものは「危険物の規制に関する政令」で規定されている。

港湾法

臨港地区や臨港地区内の土地利用に関する区分(商港区、工業工区等)を規定している。臨港地区には建築基準法の用途地域の規定が適用されず、港湾法に基づく市町村条例によって臨港地区内の区分や建設できる建築物の用途を指定している。ちなみに大阪市では商港区やマリーナ港区、修景厚生港区では危険物置場を建設することは出来ない(少量危険物庫を除く)。

危険物の規制に関する政令

危険物の規制に関する政令とは、消防法で危険物の部分について、その委任により、またはその実施のために、必要な規定を定めたものです。
参考:総務省消防庁_危険物の規制に関する政令

火災予防条例

火災予防条例は火災の予防に関する事項のうち、消防法の委任を受けたものや、地方的な事情により必要とされるもの、自主的に安全性効能のため規制すべきもの等について、各市町村において火災予防条例が制定されたものです。

普通の倉庫でも条件付きで危険物保管は出来る

上述した通り、日本では消防法によって危険物が定められており、それらを取り扱うためには厳しい基準を満たしたうえで許可を得る必要があります。したがって、消防法や市町村の条例などを想定していない一般的な倉庫であれば、大量の危険物を保管することは不可能と考えておいた方が良いでしょう。
しかし、よくよく考えてみると、一般家庭でも石油ファンヒーターを利用するため、いくらかの燃料を保管している場合がありますし、企業によっては溶接や金属の切断のために危険物に該当する物質を貯蔵している場合などもあると思います。こういった場合、一般家庭であっても、保管のための許可を取らなければならないのでしょうか?もちろん、そのようなことはなく、危険物を取り扱う場合でも、ごくわずかな量であれば許可はなしに保管することも可能です。
具体的な危険物の量に関しては、まず消防法が定める『指定数量』を知らなければいけません。この指定数量を超えて危険物を取り扱う場合には、危険物取扱者などの資格取得者や基準を満たす貯蔵庫を用意するなど、さまざまな規制を受けます。さらに、「指定数量5分の1以上」であれば、『少量危険物』に分類されることになり、資格なしでも取り扱いが可能となるのですが、『消防署に届出を出した倉庫」「貯蔵庫の周りに1m以上の保有空地を作る」等の法律に則って保管する必要があります。
つまり、危険物が「指定数量の5分の1未満」であれば、一般の倉庫などでも危険物を扱うことができるようになるのです。ちなみに、ガソリンの『指定数量』は200L、灯油・軽油は1,000Lなど、品目によって異なります。

【簡単解説】危険物倉庫に関連する法令はこちら

基準・法令に準拠した危険物倉庫の施工事例

こちらでは三和建設で建設した危険物倉庫の事例についてご紹介します。

兵庫県神戸市の危険物倉庫施工実績

兵機海運株式会社 兵庫埠頭物流センター(神戸市)

・危険物の分類
A棟:2類鉄粉・4類1石~4石 / B棟:4類1石~4石・指定数量倍数
200倍超/棟

・付帯設備
第3種 固定式粉末消火 / 定温倉庫対応 (空調設備、断熱パネル)

施工事例の詳細情報はこちら

兵庫県尼崎市の危険物倉庫施工実績

ロジポート尼崎 危険物倉庫棟

・危険物の分類
2類、4類、5類・指定数量倍数
200倍超/棟

・付帯設備
第3種 固定式泡消火設備

施工事例の詳細情報はこちら
危険物倉庫施工事例一覧はこちら

まとめ

今回は、物流倉庫などの一般的な倉庫ではなく、危険物倉庫についての基礎知識をご紹介してきました。通常の状態で保管するだけで火災や中毒など、重大な災害を引き起こす危険性がある物質の保管は、消防法によって厳しい基準が設けられています。もちろん、こういった物質を取り扱うためには、専用の保管施設の建設が必要になります。

危険物倉庫を建設する際には「建築基準法」「危険物の規則に関する政令」「火災予防条例」など、さまざまな専門的で複雑な法令を理解しておく必要があります。危険物倉庫建設の計画・設計段階でしっかりと行政指導の主旨や倉庫の特性を理解していなければ、法令の主旨にそぐわない危険物倉庫ができてしまう可能性があります。
そんな危険物倉庫の建設実績を多く持つ三和建設では、このような基準をすべて満たしたうえで危険物倉庫建設の依頼主の利便性やニーズに合わせた設計の提案を行っております。
事前の調査から建設、アフターフォローや改修工事など、危険物倉庫に関するサービスをトータルプロデュースいたします。

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