ドライバー不足の解消の一手!モーダルシフトのメリットデメリット
投稿日:2024.07.15
更新日:2024.08.05
お役立ち情報
昨今、物流業界では、トラックドライバーの高齢化や深刻な人手不足が問題視されています。物流業界は、労働環境が整っていないなどのイメージがあり、労働者の新規採用に苦戦する企業が非常に多く、それに伴い物流業界全体の高齢化が進むという悪循環に陥っています。実際に、厚生労働省の資料によると、2024年1月における運送業全体の有効求人倍率は3.39倍となっており、全産業の求人倍率1.21倍と比較すると、はるかに高い数値であることが分かります。
そこで物流業界の人手不足解決の糸口として注目されている手法が「モーダルシフト」です。モーダルシフトとは、貨物輸送を従来のようなトラック輸送から、鉄道や船舶の利用へ転換する方法のことを指し、これにより物流業界のドライバー不足やCO2排出量削減など、さまざまな問題の解決を図れると期待されています。
そこで当記事では、物流業界でモーダルシフトが注目されている背景やモーダルシフトを導入した場合に考えられるメリット・デメリットを解説します。
Contents
モーダルシフトが注目されている背景について
引用:国土交通省HPより
モーダルシフトは、トラックなどの自動車で行われている貨物輸送を、より環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換することをいいます。昨今、企業活動による環境負荷の低減が社会的責任とみなされるようになっており、多くの企業が商品の生産から廃棄にいたる全ての場面で環境負荷低減のための対策に取り組んでいます。その中でも、輸送(物流)における環境負荷の低減では、モーダルシフトへの転換が効果が大きい取り組みとして注目されています。
ここでは、近年、モーダルシフトへの注目度がさらに高まっている背景についてご紹介します。
①物流革新緊急パッケージ
ここ数年「2024年問題」という言葉を耳にする機会が増えていると思います。2024年問題の詳細は別の記事で紹介しているため省きますが、物流業界では、トラックドライバーの労働時間規制などによる輸送力の低下が問題視されています。実際に、政府の物流革新緊急パッケージ内でも「何も対策を講じなければ、2024年度には14%、2030年度には34%の輸送力不足の可能性がある。」と指摘されています。
関連記事:物流業界の「2024年問題」とは?労働時間の上限規制への対策が始まっている!
そこで2024年問題に対応するために制定された政策が「物流革新緊急パッケージ」です。物流革新緊急パッケージは、「①商慣行の見直し、②物流の効率化、③荷主・消費者の行動変容」について、抜本的・総合的な対策が策定され、物流の効率化部分において、「鉄道、内航海運の輸送量・分担率を10年程度で倍増させる」「コンテナ大型化の推進」など、モーダルシフトの導入促進があげられています。
今後、日本政府がモーダルシフト導入を強く推進していくと予想されるため、企業のモーダルシフトへの取り組みがますます強化されていくと考えられます。
参照:物流革新緊急パッケージ
②環境負荷低減
モーダルシフトは、国土交通省のサイト内でも「モーダルシフトは環境負荷の低減効果が大きい取り組み」と紹介されているように、CO2排出量削減など、地球温暖化対策の面でも有効と考えられています。
引用:国土交通省HPより
国土交通省によると、1トンの貨物を1km運ぶ(=1トンキロ)時に排出されるCO2の量は、トラック(営業用貨物車)が216gであるのに対し、鉄道は20g(約1/11)、船舶は43g(約1/5)と、貨物輸送の方法を転換することで、鉄道利用で91%、船舶利用なら80%もCO2排出量を削減することができるとしています。
世界中で地球温暖化対策への取り組みが求められる中、大幅なCO2排出量の削減が期待できるモーダルシフト導入が注目されるのは当然と言えるでしょう。
③人手不足の解消
モーダルシフトへの取り組みは、物流業界で深刻化する人手不足解消も目的の一つです。冒頭でご紹介したように、物流業界では、トラックドライバーの高齢化や人手不足が深刻化しています。公益社団法人鉄道貨物協会が公表したデータによると、このままの状態が続けば、2028年度にはドライバーが27.8万人不足すると考えられ、モノが運べなくなる可能性があるとされています。
もちろん、物流業界では賃金の改善など労働条件や労働環境の改善、最新システムの導入に共同配送の実施など、さまざまな対策がとられています。しかし、少子高齢化が進む日本の状況を考えると、トラックドライバー不足の問題は今後も続くと考えられており、トラック輸送からの転換が求められています。
モーダルシフトのメリット・デメリット
それではモーダルシフトの導入によるメリットとデメリットについてもご紹介します。
モーダルシフトのメリット
モーダルシフトは、現在の物流業界の以下の問題を解消できる点がメリットとされ、取り組む企業が増えています。
- CO2排出量削減
トラック輸送を鉄道や船舶に置き換えるモーダルシフトの大きなメリットは、CO2排出量を大幅に削減できる点です。トラック輸送と比較した場合、鉄道が91%、船舶は80%もCO2の排出を低減可能です。現在、日本国内でもカーボンニュートラルの実現が目指されており、企業のCO2排出量削減への取り組みが重要視されています。モーダルシフトを導入して、輸送時のCO2排出量を削減できるということは企業にとっても大きなメリットです。 - 長距離輸送のコスト削減
船舶や鉄道を利用した輸送の場合、一度に大量の荷物を運ぶことが可能です。例えば、日本貨物鉄道株式会社の公式サイトによると、貨物列車26両分は、10tトラック65台分に相当し、輸送効率が高いため、長距離になるほど輸送コストが低減できるとしています。さらに、交通渋滞や運転トラブルによる配送遅延などの心配が少なく、輸送効率が高くなる点もコスト削減につながります。 - ドライバー不足の解消
鉄道や船舶はより少ない人数で多くの貨物を運べる「大量輸送機関」であることから、モーダルシフトの導入は人手不足の解消にも高い効果を発揮するとされています。もちろん、鉄道や船舶の終着点から届け先までの輸送にはドライバーが必要なので、雇用が失われる心配も少ないです。トラックドライバーは、近・中距離の輸送をメインとすれば、労働時間や労働環境の改善も取り組みやすくなるため、業務内容の改善による新規ドライバー志願者の増加も期待できます。 - 補助金が利用できる
2024年現在のメリットですが、モーダルシフトの導入には「モーダルシフト等推進事業」という補助金が用意されています。
参照:日本貨物鉄道株式会社「モーダルシフトとは」
モーダルシフトのデメリット
それでは最後に、モーダルシフトのデメリット面もご紹介します。
- 輸送のリードタイムがトラックよりも長くなるケースが多い
モーダルシフトでは、トラック輸送に比べて輸送時間(リードタイム)が長くなる傾向にある点がデメリットです。船舶や鉄道を利用する場合、それぞれの出発拠点への移動、終着点から納入先への移動が必要です。さらに、船舶や鉄道は、出発時間が決まっているため、早めに搬入しても待ち時間が発生します。従来よりもリードタイムが長くなることから、野菜や肉、魚介など、鮮度が重要な食料の輸送には不向きとされる場合があります。 - 積み替え作業が発生する
モーダルシフトは、船舶や鉄道への積み卸しなど、トラック輸送よりも余計な作業が発生します。積み替え作業は、輸送時間などに影響を与えるだけでなく、貨物事故の発生リスクが高くなるなどの懸念も生じます。もちろん、トラック輸送でも、不慮の事故による貨物の落下の可能性がないわけではありませんが、積み替えの回数が増える分、貨物事故のリスクが高くなります。 - 利用範囲が限定される
モーダルシフトは、鉄道や船舶のルールに縛られます。例えば、貨物列車は決められた走行速度、時刻表通りの正確な運行が行われるため、荷物を時間通りに運べるとされています。ただ、裏を返すと、鉄道会社が決めている運送時間や頻度の条件に従う必要があることを意味します。自社の繁忙期などを理由に、運送時間や頻度を柔軟に変更することはできません。また、モーダルシフトは、長距離輸送ではコスト削減効果が見込めるとされているものの、短距離・中距離の輸送は逆にコストが高くなる点がデメリットです。 - 天候不良や自然災害の影響が大きい
船舶や鉄道を利用した輸送は、天候不良や災害が原因のダイヤの乱れによる影響が大きい点がデメリットです。一般的に、時刻通りに正確な運航が行われるため「時間通りに運べる」という点がモーダルシフトのメリットとされています。しかし、台風などの極端な天候悪化や地震などによる線路の寸断などが発生した場合、配送遅延の可能性が考えられます。もちろん、天候不良や災害による交通インフラの麻痺は、トラック輸送にも大きな影響を与えます。しかし、災害時などは、道路交通網による自動車のほうがインフラ復旧が早く、影響を小さく抑えられる可能性が高いです。
モーダルシフトは、CO2排出量削減や長距離輸送部門でのドライバー不足解消には大きな効果をもたらすと考えられているものの、上記のような問題もあり、なかなか導入が進んでいないと言われています。
まとめ
モーダルシフトは、従来のトラック輸送を鉄道や船舶に置き換えることを指しています。モーダルシフトの推進は、物流企業のCO2排出量削減やトラックドライバー不足、2024年問題など、さまざまな問題に対応するための有効な解決策とみなされています。
日本では、政府が2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しており、物流面の対策としてモーダルシフトへの取り組みを強く後押しするようになっています。日本国内でも、持続可能な物流を実現するため、モーダルシフトの取り組みに対して手厚い補助金が用意されていますので、ぜひ検討してみてはいかがでしょう。
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