大阪万博閉幕後の建築費動向を予測
投稿日:2025.02.10
更新日:2025.03.26
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今回は、大阪万博閉幕後の建築費動向について、さまざまな要素から「上がるのか?下がるのか?」を考えてみたいと思います。
建築費は、2020年後半から上昇を続けており、2023年末には約18%も上昇しているというデータがあります。さらに、2024年以降も、建設業の「2024年問題」による人件費の上昇、ガソリンや電気代などエネルギー価格の上昇といった問題があることから、下がる兆しは今のところ見られません。
ただ、2025年に入り、いよいよ大阪万博の開幕が近づいてきた現在では、今まで万博の建設に携わっていた建築業者の手があき、人手不足が解消されることで高止まりしている建築費が下がり始めるのではないかと期待する方が増えているようです。特に、工場や倉庫など、大型施設の建設を考えている事業者様の中には、「しばらく待っていれば建築費が下がり安く建てられるのではないか?」と建設計画の延期を検討している方も多いと思います。
そこでこの記事では、大阪万博閉幕後の建築費がどのように推移するのかを予測したいと思います。なお、結論から紹介しておきますが、今後の建築費動向については、残念ながら「今後も上昇が続く可能性が高い」と予測する方が多いです。ここでは、建築費の上昇傾向が止まらない要因を分かりやすく解説します。
今後の建築費動向をさまざまな要素から予想
冒頭でご紹介したように、建築費動向については、今後も下がる兆しはなく、上昇傾向を続けるのではないかと予想されています。2025年以降は、大阪万博の準備のために集中していた建設投資が分散されることになるため、人手不足などがある程度解消され、建築費は下落していくのではないかと期待している人が多いと思います。しかし、大阪万博閉幕後も、IRや能登の復興事業、その他、半導体工場やEV(電気自動車)向け蓄電池工場などといった国家施策としての大規模設備投資需要が継続されるため、建築資材費や設備費、人件費など、建築費を構成する3要素は、横ばいあるいはさらに上昇するのではないかと予想されています。
ここでは、今後の建築費ついて、いくつかの要素からその動向を予測していきます。
倉庫建設に関する上昇推移は建築費指数グラフでみる倉庫(用途別・構想別)の物価上昇推移で詳しく解説しています。
建設業界での人手不足
昨今の建築費の高騰は、建設業界の人手不足が大きな影響を与えているとされます。下図は、建設業の就業者数と高齢化の進行度がわかるグラフです。
引用:国土交通省資料より
建設業界の就業者数は、平成9年の685万人をピークに、その後はかなりの勢いで減少し続けています。この背景には、建設業は労働環境が厳しく、残業や休日出勤が多い、給料が安いなど、ネガティブなイメージが定着していることが大きな要因です。日本は、少子高齢化が社会問題となっており、労働人口が減少する中、業界の根強いマイナスイメージにより人材の確保に苦戦する企業が多くなっているとされます。
建設業界では、先ほど紹介したマイナスイメージを払しょくするため、労働環境の整備などに動く企業が増えています。また、外国人労働者、女性など、新たな層の人材確保と言った対策で人手不足の解消を目指す企業も増えていますが、現状は思ったほどの効果が出ていないと言われています。
さらに、建設業就業者のうち、3割以上が55歳以上と、他産業と比較しても高齢化の進行が問題視されています。このまま、若手人材の確保に苦戦する状況が続けば、さらに人手不足の状況が悪化し、建築費のさらなる上昇につながると考えられています。
物流業界の動向と展望と人材確保に重要な採用戦略で物流業界で人手不足が深刻化している背景についてより詳しく解説しています。
建設業の2024年問題
2024年問題は、ドライバーの労働時間に上限が設けられることでさまざまな問題が生じることを指し、「物流・運送業の2024年問題」として注目されました。しかし、労働時間の上限規制については建設業も同じで、2024年4月より時間外労働時間に罰則付きで上限が設けられています。そして、この2024年問題は、建築費の動向に大きな影響を与える要素の一つとなっています。
先程紹介したように、建築業界では深刻な人手不足に悩む企業が増えています。そこに、労働時間の上限規制が加われば、深刻な労働力不足がさらに進み、人件費が高騰すると予想されます。また、時間外労働に対する割増賃金の引き上げも人件費の上昇に影響を与えています。
建設業の2024年問題は、残業時間が制限されることで、従来のような働き方ができなくなるため、工期が長くなることも問題となります。工期の長期化は、それだけ職人を抱える日数が増えることを意味するため、建築費の上昇に影響を与えます。
為替相場
日本は、建築資材の多くを輸入に頼っています。そのため、為替の変動は、建築費に大きな影響を与えます。
ここ数年の日本は、他国との金利差の影響から円安傾向が強まっています。円安傾向は、輸出をメインとする企業にとっては望ましい環境と言えますが、建築資材を始めとする輸入品に関しては、価格が上昇してしまうという問題があります。為替相場に関しては、このまま円安傾向が続くか分かりませんが、急激な円高傾向に向かうということも考えにくいため、建築資材価格は横ばいもしくはさらなる上昇傾向が維持され、建築費もそれにつられて高止まりすると考えられます。
なお、円安傾向は、ガソリンや電気など、エネルギー価格の上昇にも影響を与えているため、この点でも建築費上昇の要因になります。
環境対策
「建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令」が改正され、2024年4月以降、工場や倉庫などの大規模施設は、より環境に配慮した建築物が求められるようになりました。具体的には、以下の通りです。
引用:国土交通省資料より
省エネ基準に適合するためには、建物の断熱対策の強化や再エネ設備の設置など、これまで以上にコストをかけなければならなくなります。さらに、政府は、2030年度までに、新築の建築物をZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)水準にすることを目指していることから、今後、建築物に求められる省エネ基準はさらに強化されると予想されます。したがって、政府が定める省エネ基準を満たすため、今後さらに建築費が高騰するのではないかと予想されます。
まとめ
今回は、大阪万博閉幕後、建築費は「上がるのか、もしくは下がるのか?」をテーマに、さまざまな要素についてその動向を解説しました。
近年、建築費は、建設業界の人手不足や2024年問題(時間外労働の規制)、建築物の環境対策、為替相場の影響など、さまざまな要素によって急激な上昇傾向を見せています。為替相場に関しては、今後、建築費が下落する方向に推移する可能性があるものの、その他の要素については構造的に問題の解消が難しいことから、今後の建築費動向は横ばいもしくは引き続き上昇すると予想されています。大阪万博閉幕後は、建築需要が分散されることで、人手不足がある程度解消されるのではないかと期待する方も多いです。しかし、この点に関しても、半導体工場やEV(電気自動車)向け蓄電池工場などといった大規模設備投資需要は継続されますし、何よりに能登の復興と言う喫緊の課題があることから、建設業界の人手不足の状況が改善されるとは思えません。
したがって、工場、倉庫の新設や建て替えなど、建物の建築を伴う事業を検討されている方は、早めに決断することをおすすめします。
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