改正物流効率化法と物流統括監理者(CLO)について

改正物流効率化法と物流統括監理者(CLO)について

投稿日:2025.10.03  お役立ち情報

2025年4月1日に改正物流効率化法が施行され、この法改正により、物流業界では単なる事業者のみの努力にとどまらず、サプライチェーン全体としての効率化が義務付けられることになります。

そして、今回の法改正では、どのような効率化施策に取り組まなければならないのか、国がその判断基準について明確に提示しています。そこでこの記事では、同法の改正によってどのようなことが変わり、どのような対応が求められているのかについて解説します。

 

物流効率化法の改正について

物流効率化法は、物流業務の総合化・効率化を促すことを目的とし、2005年に制定されました。その後、労働力不足への対応や環境負荷の低減、国際競争力の強化を目的に、時代に合わせて改正が続けられています。物流事業者は、物流の効率化に関する計画を国に申請し認定を受けることで、税制や助成金を含めた支援を受けることができるようになっています。

物流効率化法は、貨物自動車運送事業法とあわせて物流関連二法と呼ばれているのですが、「2024年問題」など、物流業界の課題に対応するため、2025年4月1日に大幅な改定が行われています。そして、この法改正に伴い、法律名が「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」に変わりました。しかし、物流業界では慣れ親しまれた名称がそのまま使われ、「新物効法」という通称で呼ばれることが多いです。

なお、今回の法改正が実施される背景は、以下の通りです。
 

引用:経済産業省資料より

このまま何も対策ができなかった場合、国内物流の約34%(9億トン相当)が不足するという問題に直面する可能性があるとされています。そこで、持続可能な物流を実現するために必要な対策がまとめられました。そしてそのうち、荷主企業や元請け事業者を含めた業界全体に具体的なアクションを促すため、今回の法改正となったのです。

なお、今回の法改正では、従来のような呼びかけだけにとどまらず、具体的なアクションを求めている点が大きな特徴です。ここでは、物流効率化法の改正ポイントについてご紹介します。

 

改正物流効率化法のスケジュールについて

 

引用:経済産業省資料より

今回の法改正により、これまで努力義務とされていた事項の一部が、実効性のある規制的措置に強化されます。まず、2025年4月からすべての物流事業者に対する努力義務が課せられ、そして第二弾として2026年4月(予定)より特定事業者に対する義務が課されるなど、段階的に規定が適用されることになっています。

 

2024年4月からすべての物流事業者に対する努力義務が課される

2025年4月1日より、改正物流効率化法に基づき、物流効率化のために「取り組むべき措置」がすべての物流事業者に対する努力義務となりました。

荷主・物流事業者などが講ずべき措置については、どんなことでも自由に実施すれば良いというわけではなく、特に以下の3つの業務に絞り、効率化のための改善が求められます。
 

引用:経済産業省資料より

 

2026年4月に予定されている特定事業者に対する義務

法改正後は、物流効率化へ大きな影響を与えると考えられる一定規模以上の企業を「特定事業者」と定義し、2026年4月(予定)以降、より具体的な義務を課すとしています。

どのような事業者が特定事業者に当たるかというと、以下のように定義されています。

  • 特定荷主・特定連鎖化事業者:取扱貨物の重量 9万トン以上(上位3,200社程度)
  • 特定倉庫業者:貨物の保管量 70万トン以上(上位70社程度)
  • 特定貨物自動車運送事業者等:保有車両台数 150台以上(上位790社程度)

上記の条件に当てはまる事業者が特定事業者とされ、以下の3つの義務が課されることになっています。

  • 物流効率化のための中長期計画の作成・提出
  • 中長期計画の定期的な報告
  • 物流統括管理者(CLO)の選任

なお、今回の法改正では、義務に違反した場合について、罰則規定も設けられています。特定事業者が上記の義務を怠った場合、その程度によって50万円から最大100万円までの罰金が科されます。ただし、2025年4月から施行されているすべての事業者に課せられる努力義務に関しては、罰則はありません。

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物流統括管理者(CLO)とは?

今回の法改正では、一定規模以上の事業者が「特定事業者」と定義され、物流効率化のための中長期計画の立案や物流統括管理者(CLO)の選任が義務化されると解説しました。

ここで気になるのは「物流統括管理者(CLO)は何で、どんな役割を担うのか?」ということではないでしょうか?ここではその基礎知識をご紹介します。
 

物流統括管理者の基本と資格要件について

物流統括管理者(CLO)は、物流効率化法の改正により、2026年4月以降、特定事業者に対して選任が義務付けられる予定の役職で、物流の適正化・生産性向上に向けた取り組みの責任者のことを指しています。

CLOは、「Chief Logistics Officer」の略称であり、官公庁の資料では「物流統括管理者=CLO」として記載をされていることが多いです。なお、JIS規格では、「物流」と「ロジスティクス」は別ものと定義されています。

2026年4月以降、特定事業者が選任しなければならない物流統括管理者は、資格要件として「事業運営上の重要な決定に参画する管理者的地位にある者をもって充てなければならない」と定められる方針となっています。これは、物流統括管理者が、サプライチェーン全体の適正化や、生産性向上の取り組みに対する責任を負う立場となるためで、経営に携わる役員クラスを基準に選任する必要があるとされています。

参考資料:国土交通省資料より

 

物流統括管理者の役割について

それでは最後に、物流統括管理者(CLO)に求められる役割について、「第3回 産業構造審議会 合同会議とりまとめ案」から引用してご紹介します。

物流統括管理者に求められる役割は以下の通りです。

  1. 中長期計画の作成
  2. トラックドライバーの負荷低減と輸送される物資のトラックへの過度の集中を是正するための事業運営方針の作成と事業管理体制の整備
  3. その他トラックドライバーの運送・荷役等の効率化のために必要な業務

また、上記の「3」の業務として、以下の業務を規定する必要があるとされています。

  1. 定期報告の作成
  2. 貨物運送の委託・受渡しの状況に関する国からの報告徴収に対する当該報告の作成
  3. 事業運営上の重要な決定に参画する立場から、社内の関係部門(開発・調達・生産・物流・販売等)間の連携体制の構築
  4. トラックドライバーの運送・荷役等の効率化のための設備投資、デジタル化、物流標準化に向けた事業計画の作成、実施及び評価
  5. トラックドライバーの運送・荷役等の効率化に関する職員の意識向上に向けた社内研修等の実施
  6. リードタイムの確保に資する調達・生産・販売を含めた在庫管理計画の作成
  7. 物資の保管・輸送の最適化に向けた物流効率化のため、調達先及び納品先等の物流統括管理者や物流事業者等の関係者との連携・調整

参照:第3回 産業構造審議会 合同会議とりまとめ案

 

まとめ

今回は、物流の2024年問題に対応するために実施された物流効率化法の改正と、2026年4月以降、改正物流効率化法により一部の企業に選任が義務化される物流統括管理者(CLO)について解説しました。

2024年問題への対応は、暮らしや経済を支える重要なインフラとなる国内物流を途切れないようにさせるためにも、国として非常に重要な課題とみなされています。そこで実施された対策が今回の物流効率化法の改正で、2025年4月以降は、すべての物流事業者に対し、物流効率化のために取り組むべき措置が求められるようになりました。特に一定規模以上の企業については、特定事業者に指定され、これまで以上に踏み込んだ役割が求められることになります。

なお、今回の改正に伴い、物流については集約や新規拠点開発などの再編が行われる可能性が高いと考えられています。実際に、弊社に対しても、とあるメーカー様からこれまで外注していた危険品保管について、自社拠点内に倉庫を新築して内製化の検討を進めたいという相談が来ています。法改正により、特定事業者の対象となる企業は、サプライチェーンに関する中長期的な計画立案を求められるようになるため、今からでもその準備を進めていかなければならないでしょう。弊社は、拠点内の再編計画などは十分にお手伝いができると思うので、お気軽にご相談ください。

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