pageTop

物流倉庫新設の注意ポイント!消防法で定められた消防設備の設置義務について

物流倉庫新設の注意ポイント!消防法で定められた消防設備の設置義務について

投稿日:2022.08.12 
更新日:2022.10.04 
お役立ち情報

今回は、物流倉庫の新設をご検討中の方に向け、消防法で定められた消防設備の設置義務に関する基礎知識をご紹介します。

EC市場が年々拡大する現在では、注文された商品を、素早くかつ安全に消費者の手元に届けるための施設として物流倉庫の需要が高くなっています。物流倉庫は、大量の荷物を入庫、保管、出庫するための施設ですので、倉庫建設時には保管効率や作業効率のことを考えて建設計画を立てるのが一般的ですが、顧客の大切な商品を守る、従業員の安全を守ることを考えると、万一の際の災害対策を検討することも重要です。

例えば、たくさんの荷物を保管する物流倉庫などで火災が発生してしまうと、甚大な被害に繋がってしまう恐れがあります。そのため、物流倉庫のような大規模施設では、万一火災が発生したとしても、被害を最小限に抑えられるよう、消防法によって消防設備の設置や届け出が義務付けられています。

この記事では、物流倉庫新設時に検討しておかなければならない、消防法との関係をまとめておきます。

消防法での消防設備や報告義務について

倉庫や工場などの大規模市施設では、消防法によって「消防設備を設置すること」、さらに定期的に消防設備の点検を行い、消防長または消防署長に届出をすることが義務付けられています。

これは、倉庫が通常の建物に比べて、窓や扉などの開口部が少なく、建物の規模の割に収容人数が少ないことから、火災が発生したとしても発見が遅れてしまう恐れがあるからです。さらに、倉庫は大量の荷物を保管することが役割の施設ですので、建物内には多くの荷物や商品が管理されているうえ、中には可燃性があるものや燃えると有毒ガスを発生させるものもあり、火災による被害が非常に大きくなってしまうリスクが高いからです。

このような理由から、万一火災が発生したとしても、その被害を最小限に抑えるため、さまざまな消防設備の設置や届け出が消防法により定められているわけです。ちなみに、消防設備の設置義務の詳細については、施設の構造や延べ床面積によって以下のように定められています。

  • 木造建築物は700㎡、耐火構造で1,400㎡、内装制限のある耐火構造では2,100㎡を超える場合、屋内消火栓設備が設置義務対象となる
  • 延床面積が500㎡を超える場合、自動火災報知設備の設置義務が課せられる
  • 天井高が10mを超える場合、スプリンクラー設備が必要になる可能性がある

なお、設置した消防設備については、定期的に点検を行い、3年に1度は消防長または消防署長に届け出・報告をする義務があります。ちなみに、機器点検を半年に1回、総合点検を1年に1回する必要があるのですが、こちらは報告義務はありません。

※消防設備の報告義務に反した場合には、30万円以下の罰金または拘留が課せられます。

参照:e-Gov|消防法

消防法で定められている消防設備について

それではここからは、消防法によって設置が義務付けられている消防設備の詳細についてご紹介していきましょう。消防設備は、大きく分けると「警報設備」「消火設備」「避難設備」の3つに分類できますので、それぞれの概要と設置基準などをまとめておきます。

警報設備について

警報設備は、火災が発生した際にいち早くその事実を感知し、建物内外の人に知らせる設備です。具体的には、以下のような機器があります。

自動火災報知設備
火災により発生する熱や煙、炎などを、火災発生の初期段階で感知し、火災発生の事実をベルや音声などの警報を発して、建物内の人々に知らせる設備です。

【設置基準】
・延べ面積500㎡以上(地階・無窓階・3階以上の階300㎡以上 )
・11階以上の階

火災通報装置(消防機関へ通報する報知設備)
火災が発生した時、専用通報装置を操作することにより、電話回線を使用して消防機関へ通報するとともに、通話ができる装置です。

【設置基準】
・延べ面積1,000 ㎡以上

※消防機関に常時通報可能な電話の設置などの要件を満たせば不要。

警報設備には、上記の他、ガス漏れ火災警報設備や漏電火災警報器などの機器が存在します。

消火設備について

消火設備は、名称からも分かるように、炎を消火し、延焼を防ぐための設備です。具体的には、以下のような機器があります。

消火器
初期火災で、消火のために用いる消火機器です。

【設置基準】
・延べ面積150㎡以上(地階・無窓階・3階以上の階 50 ㎡以上)

※無窓階とは、建築物の地上階のうち、避難上または消火活動上、有効な開口部を有しない階のことです。

屋内消火栓設備
消火器では消火不可能な段階の消化を目的として、屋内に設置する設備です。一般には、「水源・加圧装置・起動装置・消火栓箱および非常電源など」により構成されています。消火活動の際には、消火栓箱内に設置してある消火ホースを、人の操作により延長して大量の水を放射することで消火する設備です。

【設置基準】
・延べ面積700㎡以上(地階・無窓階・4階以上の階150 ㎡以上)

屋外消火栓設備
建物の1階及び2階で発生した初期火災の消火及び中期火災にも対処し、隣接建物への延焼防止のため、外部から消火作業を行う際に使用する設備です、基本的に、屋内消火栓設備と同様の設備で構成されています。屋外消火栓設備は、主に隣接建物への延焼を防ぐために用いられる設備ですので、屋内消火栓よりも水圧・放水量が多く、消化能力も大きくなっています。

【設置基準】
・1階・2階の床面積の合計3,000 ㎡

スプリンクラー設備
火災により発生した熱などを自動で感知し、天井面などに設けられたスプリンクラーヘッドから散水するなど、自動的に消火活動をする設備です。

【設置基準】
・ラック式倉庫、天井高さ10mを超え、延べ面積700 ㎡以上
・11 階以上の階

※ラック式倉庫とは、棚またはこれに類するものを設け、昇降機により収納物の搬送を行う装置を備えた倉庫。

消火設備は、このほかにも、泡消火設備、水噴霧消火設備、不活性ガス消火設備、粉末消火設備などさまざまな種類が存在します。

避難設備について

最後は避難設備についてです。避難設備は、万一火災が発生した場合でも、倉庫内で作業していた人が安全に避難できるようにするための設備です。具体的には、以下のような機器があります。

誘導標識(誘導灯)
避難経路を示して、安全な避難誘導をするための設備です。

【設置基準】
・全て(地階・無窓階・11 階以上の階は誘導灯)

避難設備については、このほかにも避難ばしごや避難すべり台(救助袋)などがあります。

参照資料:総務省消防庁「倉庫(14 項)に係る主な消防法令上の規制について」より

なお、収容人数50人以上の倉庫などでは、消防設備の設置や点検、報告だけでなく、万一の火災に備えて、「防火管理者の選任」「消防計画の作成・届出」「訓練の実施」なども定められています。

まとめ

今回は、物流倉庫新設時に考えておかなければならない、消防法で義務付けられている消防設備の設置について解説してきました。

物流倉庫は、保管効率や入出庫作業ができるだけスムーズに行えるよう作業効率を重視して建設計画が立てられるのが一般的です。もちろん、物流倉庫は、営業目的の建物になるわけですので、こういった点が重視されるのは当たり前だとは思います。

しかし、物流倉庫は、多くの人間が倉庫内で作業することになりますので、万一火災が発生した時には、非常に大きな被害に繋がってしまうリスクが存在します。特に物流倉庫は、非常に広大な面積を誇り、大量の荷物が保管される施設であることから、火災が発生しても素早く発見し消火作業に動くということが難しい面があります。このようなことから、倉庫や工場といった大規模施設では、万一の火災に備えるための設備やルールが定められているわけです。

自動倉庫の施工事例はこちらから

さまざまな技術が進化した現在でも、最新設備が整っているはずの倉庫で大規模火災が発生することも普通にありますので、物流倉庫新設時には、保管効率や作業効率だけでなく、「従業員の安全を守るには?」という部分にも注目しましょう。

TAG

もっと見る▼