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医薬品物流の特徴と医薬品・医療機器・治験薬を保管する際のポイント

医薬品物流の特徴と医薬品・医療機器・治験薬を保管する際のポイント

投稿日:2023.02.07 
更新日:2023.04.24 
お役立ち情報

現在、世界中でさまざまな医薬品が研究・開発されていて、症状に合わせてさまざまな種類の医薬品が使い分けられています。そして、そのような医療現場を陰から支えているのが、各医療機関に適切な品質を守りながら医薬品を届ける『医薬品物流』です。
そこで当記事では、医薬品物流について、その特徴などをご紹介します。
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医薬品物流の特徴

医薬品物流は、文字通り「医薬品を取り扱う物流業務」のことを指します。医薬品は、人の健康に関わる製品ですので、通常の物流とは異なるポイントがあります。例えば、医薬品の中には、環境の変化により本来の効果が失われる(もしくは変わる)ものがあるため、適切な温度管理や湿度管理が強く求められます。日本でも、新型コロナウイルスワクチンについて、決められた保管温度を逸脱したことで、大量に廃棄せざるを得なくなったといったニュースが話題になりました。

医薬品物流では、倉庫で保管する際も、目的地へ輸配送する際も、常に細心の注意を払わなければならない非常に繊細なルールが設けられているのが特徴です。以下に、医薬品物流のポイントをいくつかご紹介します。

 

温度管理について

上述した通り、医薬品物流においては「適切な温度管理がなされている」ことが非常に重要な要素です。私たちが普段手にする市販薬についても、箱に「常温で保管する」「冷所で保管する」などと、医薬品を保管する際の温度に関する規定が記載されています。これは、適切な温度帯で保管・管理しなけば、医薬品の品質が損なわれる可能性があるからです。なお、医薬品の温度管理については、5つの温度帯があります。
 

  • 標準温度・・・20℃
  • 常温・・・15~25℃
  • 室温・・・1~30℃
  • 微温・・・30~40℃
  • 冷所・・・・1~15℃

 
参照:厚生労働省『第十八改正日本薬局方

このように、医薬品は種類によって適切な保管時の温度が異なります。さらに、新型コロナウイルスワクチンのように、0℃を下回るような温度帯で管理しなければならない医薬品もあり、保管する倉庫はもちろん、輸送する際の温度管理車両が重要になります。

なお、医薬品物流においては、医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインにて「保管場所の使用前に、適切な条件下で温度マッピングを実施すること」と記載されているなど、厳格な温度管理が求められます。

 
関連記事:危険物(医薬品)の保管は温度管理が必須!GDPガイドラインに沿った医薬品保管の基礎知識とは

 

トレーサビリティについて

トレーサビリティ(Traceability)は、「トレース(Trace:追跡)」と「アビリティ(Ability:能力)」を組み合わせた造語で、日本語では「追跡可能性」と訳されます。医薬品物流においては、「医薬品がどのようにして、利用者の手元に届いたのか」を追跡するための技術が重要視されています。医薬品は、人の体内に取り入れるものなので、安心して利用するためには、工場で製造されてからどのような経路をたどって目的地に到着したのかを明確にする必要があります。

近年では、海外と医薬品を輸出入することが増えていることも、医薬品物流においてトレーサビリティが重要視される大きな要因です。たとえば、認可された本物の医薬品と偽って、偽造医薬品を製造販売するような悪質な業者もいるようで、世界中で偽造医薬品の流通量が増大していると言われています。途上国などでは、医薬品流通量の10~30%が偽物であるという報告もあるなど、医薬品物流におけるトレーサビリティの仕組みは必要不可欠な状況になっています。

医薬品の偽装は、治療効果が得られないだけでなく、予期せぬ副作用により身体障害や死に至るといったリスクがありますので、「どこで製造され、どの地域の倉庫で保管されて、どういったルートで、どの薬局に配送されたのか」を追跡できる環境が整備されているのが特徴です。

参考:医薬品、医療機器のトレーサビリティの向上

 

セキュリティについて

どのような製品の物流業務でも、セキュリティの高さが求められるでしょう。ただ、医薬品は、その中でも特に高度なセキュリティの整備が求められているのが特徴です。倉庫などで保管する時はもちろん、輸配送時についてもセキュリティに配慮する必要があります。

例えば、医薬品を保管するスペースは、ID認証管理などを行い、限られた人員しか入室出来ないようにするなど、不特定多数の第三者などが保管スペースに侵入できないようなシステムの構築が必要です。これは、医薬品が不正に加工されたり、盗難被害などに遭うことを防止するのが目的です。

医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインでは、「医薬品の貯蔵設備は、当該区域に立ち入ることができる者を特定し、立入りは権限を与えられた職員のみに限定し、立ち入る際の方法をあらかじめ定めておくこと」と定めています。

 

国が保管条件などを定めている

医薬品物流の最大の特徴は、国が保管条件などをきちんと定めているという点です。もちろん、どのような製品でも、適切な保管条件というものがあるのですが、医薬品については、2018年に厚生労働省が医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインを発出しています。

このガイドラインは、「製造された医薬品が、患者の手元に届くまでの流通過程において、医薬品の品質保証を目的にした基本的な指針」とされていて、医薬品の品質管理や流通経路の管理手法などが定められています。

医薬品物流にかかわるすべての人にとって必要な内容が示されています。

参照:厚生労働省 医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン

 

医薬品物流の3つの区分について

医薬品物流は、大きく分けると「医薬品・医療機器・治験薬」の3つに分けることができます。ここでは、医薬品、医療機器、治験薬の保管について、それぞれのポイントをご紹介します。

  • 医薬品
    医薬品物流は、病院などで患者に処方する医薬品などの物流業務です。医薬品の保管にあたっては、適切な品質管理がなされるよう、さまざまな条件が設けられていますが、特に温度に関する条件が多いです。そのため、医薬品を保管するための倉庫などでは、空調や温度管理設備への投資が加速しています。
  • 医療機器
    医療機器は、治療やリハビリなどに使用される機器の事で、一般の商品との違いは、ロット番号やシリアル番号、有効期限など、管理しなければならない項目が多いのが特徴です。そのため、単純に在庫数を正確に管理するだけでなく、ロットごとの在庫数量の管理、シリアル番号や有効期限の管理など、複雑な在庫管理が必須です。医療機器物流では、製品がどの業態の在庫で、どのようなステータスにあるのかを正確に管理できるシステムを導入しなければいけません。また、薬機法において、医療機器の安全性やリスク管理のために、トレーサビリティ管理が義務付けられている点もポイントです。
  • 治験薬
    治験薬物流は、未承認の新薬を取り扱う物流です。治験薬を保管する際も、温度・湿度の管理が重要で、それぞれの特性に応じて適切な温度管理が可能な保管スペースを確保しなければいけません。また、治験薬物流では、ソースマーキングやバーコードなどが無いため、在庫管理システムの整備がポイントになります。

関連記事:4温度帯とは?医薬品・医療機器・治験薬の物流に必須の低温倉庫
 

まとめ

今回は、年々その重要度が増していると言われている医薬品物流の特徴について解説しました。医薬品は、人の健康を守るために開発されているものですので、保管や輸送の際にも、その品質を維持するために細心の注意が必要です。日本国内では、2018年に厚生労働省より医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインが発出されるなど、医薬品物流に関わるルールが厳格になってきています。

さらに、医薬品の取扱いを行う時には「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(略称:薬機法)」も関わってきます。薬機法は、医薬品や医療機器の品質・安全性・有効性を担保することが目的で作られており、製造や表示、流通・販売、広告など、あらゆる項目において厳格な規定が定められています。そして、医薬品物流に関わる倉庫業者様の中には、営業倉庫の届け出だけを行っただけでは、薬機法違反になる可能性があります。

医薬品物流と薬機法の関係については、以前別の記事にまとめていますので、ぜひ以下の記事も合わせてご参照ください。

関連記事:医薬品倉庫と医薬品の物流業務に必要な許可を解説

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