法改正で変わる!危険物倉庫のラック選び。固定式から移動式へ、高効率化を実現するポイント解説

法改正で変わる!危険物倉庫のラック選び。固定式から移動式へ、高効率化を実現するポイント解説

投稿日:2025.12.04  お役立ち情報

2025年5月の法改正により、危険物倉庫で移動ラックの導入が正式に可能になりました。これまでは、所轄の消防による判断に委ねられていたため、危険物倉庫への移動ラックの導入は、相談の時点で不可とされるケースもあったのですが、本年5月の法改正では、「移動ラック導入も可能である」ということが明記されたことにより、危険物倉庫内の保管方法の選択肢は大きく広がったと言えるでしょう。

そこで本記事では、今回の法改正によって危険物倉庫のラック選びがどう変わるのかについて解説していきたいと思います。

 

危険物倉庫と一般的な倉庫の「基準」の違い

そもそも、なぜ危険物倉庫への移動ラック導入が難しかったのでしょうか。基礎知識として、一般倉庫との違いを整理します。

 

一般的な倉庫とは

物品を保管するための建物ですが、建築基準法のほか営業倉庫であれば国土交通省の基準(建築基準法、耐火性能など)を満たせば営業可能です。保管物の種類によって基準は異なりますが、危険物倉庫ほど厳格な設備規制はありません 。

 

危険物倉庫とは

消防法で定められた「危険物(ガソリン、塗料、消毒用アルコールなど)」を保管するための倉庫です 。 火災リスクが高いため、以下のような厳しい構造・設備基準が設けられています 。
 

  • 軒高6m未満の平屋建て
  • 床面積1,000㎡以下
  • 壁、柱、床の耐火性・不燃性の確保
  • 架台(ラック)の不燃材料使用と転倒防止措置

 
これまで、この「架台の基準」が保管効率を高める上での大きなボトルネックとなっていました 。

 

危険物倉庫のラック設備基準:改正前後でどう変わった?

それでは、2025年5月の法改正によって、危険物倉庫におけるラック選びがどう変わったのかについて解説していきます。

ここでは、改正前後の条文を比較する形で、ラックに係わる設置基準の変更点をご紹介します。

 
【危険物の規制に関する規則(第16条の2の2)の比較】

項目 改正前(従来) 改正後(2025年5月~)
材料 不燃材料で造ること 不燃材料で造ること(変更なし) 
固定 堅固な基礎に固定すること 堅固な基礎に固定すること。
ただし、告示で定める架台(移動ラック等)はこの限りではない 

 

法改正によって移動ラックの導入が可能に!

それでは、危険物倉庫のラックに係わる基準の変更点について解説していきます。まず、総務省消防庁が令和7年5月に配布した報道資料では、危険物倉庫のラックについて、以下のようにその変更点が記載されています。

(引用)
3)屋内貯蔵所の架台の基準に係る見直し【新規則第 16 条の2の2及び危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示の一部を改正する件による改正後の告示(以下「新告示」という。)第4条の2の2関係】

屋内貯蔵所の架台が特定の構造等を有する場合は、架台を堅固な基礎に固定しなくてもよいこととする。

引用:総務省消防庁報道資料より

(引用)
危険物倉庫の架台の基準見直しについて、改正前後で条文がどう変わったのかも見ていきましょう。まず、「危険物の規制に関する規則(危規則)16条2の2」について、改正前後で以下のように変更が加えられています。

■従来の危規則16条の2の2

一 架台は、不燃材料で造ることともに、堅固な基礎に固定すること 

これが以下のように変更されています。

■改正後の危規則16条の2の2

一 架台は不燃材料で造ること

一の二 架台は堅固な基礎に固定すること。ただし、告示で定める架台にあつては、この限りでない

従来の危規則では「堅固な基礎に固定すること」とだけ定められていたのですが、今回の改正により「ただし、告示で定める架台にあっては、この限りでない。」という一文が加えられています。

そして「告示で定める架台」については、「危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(危告示第4条2の2)」で以下のように定められています。

(引用)
(屋内貯蔵所の架台の基準)
第四条の二の二 規則第十六条の二の二第一項第一号の二の告示で定める架台は、床に直接設けられ、又は堅固な基礎に固定して設けられたレールに沿つて移動させることができるものであつて、容易に転倒しない構造を有するものとする。

引用:総務省消防庁webサイトより

(引用)
上記の通り、「レールに沿って移動させることができるもの」と記載されているのですが、これは正に移動ラックのことを指しており、これにより危険物倉庫での移動ラックの設置が可能になったことを意味しているわけです。なお、条文の最後に「容易に転倒しない構造を有するものとする。」という一文があるのですが、「容易に転倒しない構造」に関する明確な基準は設けられていません。つまり、この部分に関しては、所轄消防や行政との協議で決めていく形となるでしょう。

参照:e-Gov|危険物の規制に関する規則

 

移動ラックの設置が可能になることで得られるメリット

今回の改正により、危険物倉庫でも、上のような移動ラックの導入が可能になりました。それでは、危険物倉庫への移動ラックの導入には、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、危険物倉庫のラックを固定型から移動型に変更することによる代表的なメリットをご紹介します。
 

  • 保管効率の向上
    最大のメリットは「保管力のアップ」です。固定ラックの場合、棚と棚の間に必ず通路が必要になりますが、移動ラックは作業する箇所の通路だけを開けば良いため、デッドスペースを削減できます。限られた床面積(危険物倉庫は原則1,000㎡以下)の中で、保管容量を最大化することが可能です 。
  • 作業効率や安全性の向上
    電動式の移動ラックを導入すれば、通路を整理することで人やフォークリフトの交差が減り、接触事故のリスク低減や、作業員の安全確保にもつながります 。

移動ラックは、倉庫空間を最大限まで有効活用することができるようになるため、保管効率を大幅にアップできるほか、作業員の安全確保など、さまざまな面に好影響をもたらせてくれると考えられます。

ただ、先ほど紹介したように、移動ラックの基準については、明確でない部分もあるため、導入には所轄消防や行政との個別協議が必要になる点は、注意が必要です。

 

まとめ

今回は、20255年5月に施行された、危険物倉庫の「架台(ラック)」に係わる法改正について、どのような変更が加えられたのかについて解説しました。

簡単に言うと、今までは協議すらできないケースもあった危険物倉庫への移動ラックの設置が、正式に認められたということが大きなポイントとなります。記事内でも紹介しているように、条文内に「レールに沿って移動させることができるもの」と明確に記載されているため、国が正式に導入を認めたのだと受け取っても良いと思います。

ただ、導入可能な移動ラックについては「容易に転倒しない構造」という条件が設けられていて、この部分について法文上は明確な基準が定められていないという点には注意が必要です。

また、危険物倉庫には保管物によって床の傾斜や電気設備の防爆対応が求められますので、同様に注意が必要です。

「自社の倉庫に導入できるか知りたい」「消防との協議をサポートしてほしい」とお考えの方は、ぜひRiSOKOへご相談ください。

 
施工実績一覧はこちらから

工場・倉庫建設の課題解決事例集無料で配布中!

危険物倉庫VR動画

危険物倉庫 施工実績 バーチャル内覧

TAG

もっと見る▼