既存・新設の危険物倉庫に太陽光パネルを設置する際の法令と安全対策について解説
投稿日:2025.09.24 お役立ち情報

工場や倉庫など、大規模施設への太陽光発電設備の導入が加速するなか、新設はもちろん既存の危険物施設への太陽光発電の設置要望も増えています。
その他の施設と同様に、危険物倉庫の屋根上に太陽光発電の設置が叶えば、倉庫の運用にかかる電気代などを大幅に削減することができます。また、国を挙げてCO2排出量の削減が取り組まれている昨今では、環境への配慮の面からも広い屋根面積を誇る倉庫は、太陽光発電などの再エネ設備の設置に適していると考えられます。
しかし、危険物倉庫は、保管している物品の特性から、太陽光発電設備の導入にはさまざまな課題が存在します。そもそも危険物とは「火災、爆発、中毒などを引き起こす危険性のある物質」の総称で、消防法により、火災の発生や拡大、消化の困難性などの観点から、特に危険性が高いとされる物質が指定され、その貯蔵や取り扱いに規制が設けられています。そのため、電力を作るための設備である太陽光発電設備の導入に関しては、さまざまな安全対策が求められます。
危険物施設への太陽光発電設備の導入に関しては、消防庁が危険物施設の所有者などに対し、実施すべき安全対策などについてまとめたガイドラインを公表しています。この記事では、消防庁が公表している「危険物施設に太陽光発電設備を設置する場合の安全対策等に関するガイドライン」を参考に、危険物施設に太陽光発電設備を設置する場合に実施しなければならない安全対策をご紹介します。また、既存の危険物倉庫に太陽光発電の設置する際に関連する法令などについてもまとめます。
Contents
既存危険物倉庫に太陽光パネルを設置する際、関係する主な法令
既存危険物倉庫への太陽光発電設備の導入に際しては、危険物の規制に関する政令や消防法、電気事業法など、さまざまな法令が関係します。ここでは、それぞれの法令が、危険物施設への太陽光発電設備の導入にどう関わるのかをまとめます。
- 危険物の規制に関する政令
消防法の危険物に関する規定を具体的に定めた政令です。危険物の貯蔵や取り扱いに関する基本的なルールは、消防法によって定められているのですが、その委任を受けてより詳細な規定がこの政令で定められています。この中で、危険物施設において、火災や爆発の原因となる電気設備は設置できないと定められています。 - 消防法
危険物の取り扱いに関する基本的なルールなどが定められています。そして太陽光発電設備の設置に関するガイドラインもこの法律で定められています。安全対策の内容は後述しますが、自然災害や経年劣化によるリスク、火災時の安全対策などが消防法によって規定されています。 - 電気事業法
電気工作物の工事、維持、運用に関する規制などが定められています。太陽光発電設備の設置に関しては、技術基準適合維持、基礎情報届出制度、使用前自己確認制度などが義務付けられています。 - 建築基準法
高さ制限や耐震基準、用途変更などに関するルールが関係してくる可能性があります。
上記のほか、設置場所や状況に応じて、その他の関係法令を遵守する必要が出てくるので、専門家のアドバイスにしたがって適切な対応を行いましょう。
既存危険物施設への太陽光発電設備導入時に講ずべき具体的な安全対策について
それでは、既存の危険物施設に太陽光発電設備の設置を実施する際、講ずべき具体的な安全対策について解説します。ここでは、消防庁が公表している「危険物施設に太陽光発電設備を設置する場合の安全対策等に関するガイドライン」から、所有者に求められる安全対策をご紹介します。このガイドラインの趣旨は、以下のように解説されています。
危険物施設に太陽光発電設備を設置することにより危険物施設の事故リスクが増大することを踏まえ、危険物施設の許可を受けた者は当該危険物施設に太陽光発電設備を設置する際の安全対策を確実に実施するとともに、適切に維持・管理する必要がある。
引用:危険物施設に太陽光発電設備を設置する場合の安全対策等に関するガイドライン
1.自然災害に関するリスクへの対策
一つ目は、自然災害を原因とするリスクに対する安全対策です。危険物施設の屋根の上に太陽光パネルを設置する場合、以下の1及び2の安全対策を講じる必要があるとされています。
- 地震災害に関するリスクへの対策
ア 太陽電池モジュールの重量を建築物の屋根に加えた上で構造計算を行い、建築基準法で定められる中程度(稀に発生する)の地震力に対して損傷が生じないこと及び最大級(極めて稀に発生する)の地震力に対して倒壊・崩壊しないこと。
イ 太陽電池モジュールの架台が、JIS C 8955「太陽電池アレイ用支持物設計標準」に基づいて算出した設計用地震荷重(建築基準法施行令で定める算出方法による荷重と同等)を想定荷重として、強度を満たすこと。 - 積雪、暴風災害に関するリスクへの対策
ア 太陽電池モジュールの重量を建築物の屋根に加えた上で構造計算を行い、建築基準法で定められる中程度の積雪荷重・風圧力に対して損傷が生じないこと及び最大級の積雪荷重・風圧力に対して、倒壊・崩壊しないこと。
イ 太陽電池モジュールの架台が、JIS C 8955「太陽電池アレイ用支持物設計標準」に基づいて算出した設計用風圧荷重及び積雪荷重(建築基準別紙法施行令で定める算出方法による荷重と同等)を想定荷重として、強度を満たすこと。
自然災害に係わるリスクに対する安全対策は、上の二つが指摘されています。なお、太陽光パネルを設置する建築物および架台が、地震力に対して十分な安全性を有していることを消防機関が確認することは難しいです。そのため、このガイドラインでは、危険物施設の所有者などが、自らの責任の下で、建築基準法などで定められる基準に適合していることを確認し、その旨を消防機関に示すことが必要としています。
2.爆発に関するリスクへの対策
二つ目は爆発に関するリスクへの安全対策です。危険物倉庫は、消防法で定められた危険物を貯蔵するための施設であるため、爆発に関するリスクに対しては厳重な安全対策が求められています。
太陽光パネルを危険物施設の屋根の上に設置する場合、その設備の設置により、危険物の規制に関する政令により求められている「放爆性能(施設内で火災により爆発的な燃焼現象が発生した場合において早期に爆風圧を抜く性能)」への影響については少ないと考えられるものの、以下の1及び2に留意して設置する必要があるとされています。
- 屋根が適正に放爆されるよう、壁については堅固さが確保され、十分な強度が発揮できるように施工を行う必要があること。
- 架台を屋根上に設置する場合は、その重量が大きいことから、屋根ふき材に直接設置するのではなく、はりに直接荷重がかかるような設置が望ましいこと。
3.火災(爆発以外)に関するリスクへの対策
最後は、爆発以外の火災に関するリスクへの安全対策についてです。太陽光発電設備を危険物施設に導入する場合、他の施設などで発生した火災の影響を防ぐとともに、危険物施設内で発生した火災が、延焼拡大することを防止する対策が必要です。そのためには、以下の1〜3の対策を講じる必要があるとされています。また、危険物の規制に関する政令の規定のとおり、電気工作物に係る法令の規定を遵守する必要があります。
- 太陽電池モジュールは、カバーガラスに電極、太陽電池セルを充填剤で封止し、裏面フィルム又は合わせガラスで挟み込んだ構造で、結晶系、薄膜系、CIS系のものとすること。
- 太陽電池モジュールの可燃物使用量が1㎡あたり概ね2,000g以下のものとすること。
- 太陽電池モジュールは、JIS C 8992‐2 に基づく火災試験又は同等の性能試験に適合するものとすること。
4.経年劣化に関するリスクへの対策
危険物倉庫への太陽光発電設備の導入に関しては、設置時の安全対策以外にも、経年劣化に関するリスクへの対策を講ずる必要があるとされています。維持管理面の安全対策については、以下の通りです。
危険物施設に設置する太陽光発電設備のうち、給油取扱所のキャノピー上部等、危険物施設と直接関連がないと考えられる部分に設置されている太陽電池モジュール等の電気設備以外の危険物施設に関連するものについては、危険物
の規制に関する政令に規定される電気設備に該当するため、1年に1回以上の定期点検が必要となる。
(中略)
危険物施設に設置した太陽光発電設備に関する具体的な点検方法については、一般社団法人太陽光発電協会の保守点検ガイドライン等を参考として自主的に事業者が取り組むことが望ましい。
引用:危険物施設に太陽光発電設備を設置する場合の安全対策等に関するガイドライン
まとめ
今回は、新設及び既存の危険物倉庫に太陽光発電設備を導入する場合の安全対策について、消防庁が公表しているガイドラインを参考に、講ずべき具体的な安全対策を紹介しました。
火災や爆発、中毒などを引き起こす危険性のある危険物の貯蔵を担う危険物倉庫への太陽光発電設備の導入は、さまざまなリスクに備えるための安全対策を講じることが求められています。
危険物倉庫への太陽光発電設備の導入を検討する際は、危険物倉庫の建設・改修実績が豊富な三和建設へご相談ください。
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