「営業倉庫」に求められる強度に関する施設設備基準
投稿日:2021.09.25
更新日:2022.12.22
お役立ち情報
Contents
倉庫の強度に関する設置基準
それでは、倉庫の施設設備基準の中でも『強度』に関する部分を解説していきましょう。
そもそも営業倉庫という物には、さまざまな施設設備基準が設けられています。「施設の使用権原があること」と「建築基準法をはじめとした各種法令に適合していること」という部分は全ての倉庫に当てはまるのですが、一類~三類倉庫、冷蔵倉庫などは『強度』に関して以下のように定められています。
軸組み、外壁又は荷ずり及び床の強度が、国土交通大臣の定める基準に適合していること。
ここで気になるのは「国土交通大臣の定める基準に適合」という部分ですが、国土交通大臣の定める基準については、倉庫業法施行規則等運用方針の中で以下のように定められています。
- 1.軸組み、外壁又は荷ずりの強度の基準は、2,500N/㎡以上の荷重に耐える強度を有することとする。
- 2.床の強度の基準は、3,900N/㎡以上の積載荷重に耐える強度を有することとする。
なお、『荷ずり』とは倉庫の内側に貼り付けられる厚板または棒のをことを指します。これにより、荷崩れや湿気などから壁を守ることができます。
圧力を表す単位です。「1N」は約0.102kg重の力になります。つまり、倉庫の強度の基準としては、軸組み、外壁又は荷ずりは、1㎡辺り約255㎏、床は約398kgの圧力に耐えられる構造にする必要があるということです。
関連:倉庫業法施行規則
関連:倉庫業法第3条の登録の基準等に関する告示
建築構造について
それでは、もう少し細かく、倉庫の施設設備基準を見ていきましょう。運用方針〔4〕2-3イに「軸組み、外壁又は荷ずりの強度」が規定されています。
①以下のいずれかに該当する倉庫は無条件でOK
- 鉄骨鉄筋コンクリート造
- 鉄筋コンクリート造
- 補強コンクリートブロック造
- 煉瓦造
- 石造
- コンクリート造
- その他組積造
「倉庫」として建築確認申請がなされて、上記構造において「建築確認済証」および「完了検査済証」があればOKです。
②軸組みが、鉄骨造又は木造で、以下のいずれかに該当する倉庫
「倉庫」として建築確認申請がなされ、鉄骨造または木造の構造の場合は、以下の条件のどちらかを満たしていればOKとされています。
- 76cm 以下の間隔で設けられた荷ずり及び 90cm 以下の間隔で設けられた胴縁を有するもの
- 下地板又は内壁(木板、木毛セメント板又は石膏ボードの類にあっては厚さ1.2cm 以上、硬質木片セメント板、合板の類にあっては厚さ 0.9cm 以上のものに限る。)を有するとともに、90cm 以下の間隔で設けられた胴縁を有するもの
③外壁の許容荷重が2,500N/㎡以上となるように、当該パネルの長さが設定されている以下のいずれかに該当する倉庫
プレキャストコンクリート板、軽量気泡コンクリート板若しくはセメント成型板の外壁を有すること又はこれら以外のパネル製の外壁を有している倉庫であり、かつ、当該パネルの許容荷重が 2500N/㎡以上となるように、当該パネルの長さ(1枚のパネルであっても、間柱・胴縁等により支持されている場合にあっては、当該間柱・胴縁の間隔分の幅を有する複数枚のパネルであるものとして取り扱うこととする。)が設定されているもの。
パネルの基準適合性を審査する場合にあっては、パネルを製造したメーカー等の作成した、パネルの長さと許容荷重との相関関係を表にした資料等を適宜参考にすること。
引用:運用方針〔4〕2-3イc
鉄筋コンクリート造などでは、型枠にコンクリートを流し込み、固めることで外壁を作ります。しかし、鉄骨造などでは、工場などで既に成形されている外壁パネルを間柱・胴縁等に貼ることで外壁を作る工法が良く採用されます。この場合、当該パネルの許容荷重が 2500N/㎡以上であることを、メーカーのパンフレットなどで確認する必要があります。
①~③に該当しないもの
a~cの基準に該当しない構造であってメーカー、民間の建築士事務所その他の者の行った検査により、当該軸組み、外壁又は荷擦りが 2500N/㎡以上の荷重に耐えられる強度を有することが証明できるもの
引用:運用方針〔4〕2-3イd
①~③の基準に該当することが、図面などによって確認できない場合、1級建築士などに依頼して、証明する必要があります。
参考資料:運用方針〔4〕2-3
開口部について
なお、外壁に窓その他の開口部が設けられている場合であって、当該開口部の幅及び高さがいずれも内法寸法で1m以上である場合にあっては、当該開口部の設けられている部分は十分な強度を有している外壁とは認められない。
ただし、当該開口部が下地板、角材等により補強されている場合、鉄格子により防御されている場合、開口部に JIS 規格 S-6 グレード以上の建具が設けられている場合等十分な強度を有すると認められる場合にあっては、この限りではない。
引用:運用方針〔4〕2-3イ
倉庫業法施行規則等運用方針には上記のように定められており、開口部の内法寸法の幅と高さの両方が1m以上ある場合、「十分な強度を有している外壁とは認められない。」とされNGです。しかし、以下のような場合は認められます。
- 開口部の内法寸法の幅と高さのいずれかが1m以下
- 開口部が下地板、角材等により補強されている場合
- 開口部が鉄格子により防御されている場合
- 開口部にJIS規格S-6グレード以上の建具を使っている場合
荷崩れのおそれのない措置
(2) 「荷崩れのおそれのない措置」として以下の措置が講じられている場合にあっては、軸組み、外壁又は荷擦りが(1)の基準を満たしていることを要しない(告第3条第1項ただし書き)。
引用:運用方針〔4〕2-3
ここまでで説明した強度に関する基準は、荷崩れを起こした場合、壁が壊れてしまって、近隣住宅や通行人に被害を及ぼしてしまう危険がある事から定められています。したがって、「そもそも荷崩れしない」ような措置がとられている場合は、上述の基準を満たしていなくても良いとされています。
荷崩れしない措置は以下のようなものです。
a ラックを使用して貨物を保管している場合又は貨物を平積みにしている場合等、保管の態様又は貨物の性状からみて、荷崩れが発生する危険のない場合。この場合にあっては、倉庫の図面中においてラックの配置状況及び構造の概要を示すこととする。
b 外壁から離れた場所(外壁から貨物の高さと同じ距離(高さが6m以上の場合にあっては、6mの距離)をとることとする。)に貨物を配置している場合等荷崩れが発生した場合でも貨物の配置上外壁に損傷を与えるおそれがない場合。この場合にあっては、倉庫の図面中において貨物の配置箇所を明示しておくとともに、倉庫内においても白線を引く等により当該箇所を明示の上、指定箇所外に貨物を置かないように当該倉庫業者において従業員に周知徹底を図るものとする。
なお、庫内の貨物が、貨物の性状から見て一定の高さ以上に積まれることのない場合にあっては、外壁のうちその高さより上の部分については、bに該当するものとして取り扱うこととするが、この場合についても、同様に貨物を置く高さの上限を壁に白線を引く等により明示した上で、その高さ以上に貨物を積まないように当該倉庫業者において従業員に周知徹底を図るものとする。
引用:運用方針〔4〕2-3
ラックの中には荷崩れを防ぐための処置が行われているものがありますので、それを採用していればOKです。また、荷物そのものが荷崩れを起こすようなタイプではない場合もOKとされています。
ラックを使用しない場合は、荷物の高さ分だけ外壁から距離を離して置くこととし、倉庫の床に白線を引くなどとして、従業員がものを置かないようにする対策を講じます。また、積み上げ高さが決まっている場合、その高さの位置に白線を引き、そこが上限だと従業員に周知しておく必要があるとされています。
参考資料:運用方針〔4〕2-3
まとめ
今回は、営業倉庫の中でも、一類~三類倉庫、冷蔵倉庫における『強度』に関する施設設備基準をご紹介してきました。なお倉庫の施設設備基準は21もの基準が設けられていますので、建設を予定している倉庫の種類によっては、このほかにもさまざまな部分に注目しなければいけません。
倉庫などの専門性が高い施設の建設が難しいところは、関係する法令が多く存在しており、その分守らなければならない基準が非常に多い点にあります。専門性が高い施設の建設は弊社のような経験豊富な専門業者にご相談ください。
【関連記事】
営業倉庫とは?自家用倉庫との違いと倉庫業法について解説
医薬品倉庫と医薬品の物流業務に必要な許可を解説
この記事の著者
松本孝文
大阪本店次長 兼 リソウコブランドマネージャー
一級建築士
施工管理職、意匠設計職に従事
2010年1月 三和建設株式会社入社
2013年4月 大阪本店次長 兼 営業グループリーダー
2018年10月 リソウコブランドマネージャー(兼務)
2021年10月 大阪本店次長 兼 設計グループリーダー
関連記事
ARCHIVE
TAG
- #建設準備
- #グラフ
- #建築費
- #ドライバー不足
- #立地
- #2024年問題
- #3PL
- #3温度帯
- #4温度帯
- #AGV
- #AI
- #AVG
- #CAS冷凍
- #EC
- #FSSC22000
- #GDPガイドライン
- #IoT
- #IT
- #LED
- #RiSOKOセミナー
- #Society 5.0
- #Third Party Logistics
- #エアコン
- #カーボンニュートラル
- #ガソリン
- #グッズ
- #コールドチェーン
- #コロナ
- #コロナ禍
- #システム建築
- #タグを削除: RiSOKOセミナー RiSOKOセミナー
- #デバンニング
- #トラック待機時間
- #バンニング
- #ひさし
- #ピッキング
- #フォークリフト
- #プラスチック削減
- #フルフィルメント
- #プロトン凍結
- #フロン排出抑制法
- #フロン管理義務
- #マテハン
- #マテハン機器
- #メディカル物流
- #ラック
- #リチウムイオン蓄電池
- #ロボット
- #ロボット化
- #中小企業支援策
- #事故事例
- #人手不足
- #人材不足
- #低温倉庫
- #低温物流
- #保安距離
- #保有空地
- #保管効率
- #保管場所
- #保管温度帯
- #倉庫
- #倉庫の強度
- #倉庫の種類
- #倉庫建設
- #倉庫建設コンサルタント
- #倉庫新築
- #倉庫業法
- #倉庫火災
- #免震
- #共同物流
- #冷凍倉庫
- #冷凍自動倉庫
- #冷凍食品
- #冷蔵倉庫
- #冷蔵庫
- #削減
- #労働時間
- #労働災害
- #医療機器
- #医療物流
- #医薬品
- #医薬品の物流業務
- #医薬品保管
- #医薬品倉庫
- #危険物
- #危険物倉庫
- #危険物施設
- #営業倉庫
- #国際規格
- #土地
- #地震
- #地震対策
- #基礎知識
- #安全
- #安全対策
- #定期点検
- #定義
- #対策
- #屋内タンク貯蔵所
- #屋内貯蔵所
- #工場
- #工場の衛生管理
- #建築基準法施行令
- #建設計画
- #従業員
- #感染予防
- #技術
- #換気設備
- #改修工事
- #政令
- #新型コロナウイルス
- #新築
- #施設設備基準
- #機能倉庫建設
- #水害
- #水害対策
- #治験薬
- #法律
- #消防法
- #消防設備
- #温度管理
- #火災
- #火災対策
- #災害
- #無人搬送ロボット
- #無人搬送車
- #無人配送車
- #燃料費
- #物流
- #物流DX
- #物流センター
- #物流倉庫
- #物流倉庫新設
- #物流倉庫自動化
- #物流拠点
- #物流業界
- #物流総合効率化法
- #物流課題
- #特殊倉庫
- #用途地域
- #異物混入
- #着工床面積
- #空調
- #結露
- #耐震工事
- #職場認証制度
- #自動倉庫
- #自動化
- #自動車運送事業者
- #衛生管理
- #補助金
- #規制緩和
- #調理器具
- #貸倉庫
- #軽油
- #適正流通ガイドライン
- #関西物流展
- #防災
- #防災用品
- #防爆構造
- #集中豪雨
- #電気代
- #電気代削減方法
- #静電気
- #静電気対策
- #非危険物
- #非接触
- #食品倉庫
- #食品物流
- #食品衛生法
もっと見る▼
お客様の事業そのものや建物の使われ方から理解を深め、単なる箱としての建築ではなく、機能としての”使える建物”のご提供を心掛けています。