危険物倉庫の温度管理について
投稿日:2021.12.10
更新日:2024.06.21
お役立ち情報
今回は、消防法に定められている危険物の保管を行う危険物倉庫での温度管理について簡単に解説していきたいと思います。
「危険物」と聞けば、人体に有害な劇物や毒物をイメージする方が多いかもしれませんが、一般的に「通常の状態で保管しても、発火または引火しやすい危険性を持っている物質や他の物質と混在することによって燃焼を促進させる物質」のことを指しています。つまり、危険物倉庫というものは、このような引火性・発火性を持っており、火災や爆発、中毒などの災害に繋がる危険性を持つ物質を保管するための施設であり、事故を未然に防ぐためには、保管する物質に合わせた環境を作っておく必要があります。
例えば、危険物の中には、比較的低い温度で反応が始まる物質もあれば、保管温度が低すぎると結晶化して使用できなくなってしまうような物質があり、安全と品質、両方を守るためには温度管理が非常に重要です。
そこでこの記事では、日本国内での危険物の分類と、それらを保管する危険物倉庫で頭に入れておくべき温度管理について解説します。
危険物の分類について
それではまず、保管する際に特殊な取り扱いが必要となる危険物の分類について解説しておきます。上述したように、危険物とは「通常の状態で保管・放置しておくと、引火性・発火性があり、火災や爆発、中毒などの災害につながる危険がある物質」のことを指しており、消防法によって、その化学的性質や性状によって第一類~第六類に分類されています。
以下に、消防法で定められている危険物の分類をご紹介しておきます。
類別と性質 | 特徴 | 品名 |
---|---|---|
第一類 酸化性固体 | 他の物質を強く酸化させる性質があり、可燃性と混合したときに、『熱・衝撃・摩擦』により、きわめて激しい燃焼を起こさせる。 | (1) 塩素酸塩類 (2) 過塩素酸塩類 (3) 無機過酸化物 (4) 亜塩素酸塩類 (5) 臭素酸塩類 (6) 硝酸塩類 (7) よう素酸塩類 (8) 過マンガン酸塩類 (9) 重クロム酸塩類 (10)その他のもので政令で定めるもの (11)前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの |
第二類 可燃性固体 | 火炎により着火しやすい固体、または比較的低温(40℃未満)で引火しやすい固体であり、出火しやすく、かつ燃焼が速い。有毒のもの、燃焼のときに有毒ガスを発生するものがある。 | (1) 硫化りん (2) 赤りん (3) 硫黄 (4) 鉄粉 (5) 金属粉 (6) マグネシウム (7) その他のもので政令で定めるもの (8) 前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの (9) 引火性固体 |
第三類 自然発火性物質及び禁水性物質 | 空気にさらされることにより自然発火し、または水と接触して発火し、または可燃性ガスを発生する。 | (1) カリウム (2) ナトリウム (3) アルキルアルミニウム (4) アルキルリチウム (5) 黄りん (6) アルカリ金属(カリウム及びナトリウムを除く。)及びアルカリ土類金属 (7) 有機金属化合物(アルキルアルミニウム及びアルキルリチウムを除く。) (8) 金属の水素化物 (9) 金属のりん化物 (10)カルシウム又はアルミニウムの炭化物 (11)その他のもので政令で定めるもの (12)前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの |
第四類 引火性液体 | 液体であり、引火性をもつもの | (1) 特殊引火物 (2) 第一石油類 (3) アルコール類 (4) 第二石油類 (5) 第三石油類 (6) 第四石油類 (7) 動植物油類 |
第五類 自己反応性物質 | 固体または液体であり、加熱分解などにより比較的低い温度で多量の熱を発生し、または爆発的に反応が進行する。このカテゴリーの物質は分子内に酸素を含んでおり、空気に触れなくても燃焼が進む。 | (1) 有機過酸化物 (2) 硝酸エステル類 (3) ニトロ化合物 (4) ニトロソ化合物 (5) アゾ化合物 (6) ジアゾ化合物 (7) ヒドラジンの誘導体 (8) ヒドロキシルアミン (9) ヒドロキシルアミン塩類 (10)その他のもので政令で定めるもの (11)前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの |
第六類 酸化性液体 | そのもの自体は燃焼しない液体であるが、混在するほかの可燃物の燃焼を促進する性質をもつ。 | (1) 過塩素酸 (2) 過酸化水素 (3) 硝酸 (4) その他のもので政令で定めるもの (5) 前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの |
危険物は、消防法によって上記のように分類されています。
参照データ:消防法令抜粋(消防法上の危険物の定義、試験方法など)
参考:日本危険物倉庫協会サイトより
危険物の温度管理について
一口に危険物と言っても、上記のような分類がされており、それぞれが異なる特徴を持っています。特に注意が必要なのは、危険物の中には、一定の温度で管理されている定温倉庫などでの管理・保管が必要になる物質が多いということです。
これは、危険物が「通常の状態で保管・放置」していたとしても、火災や爆発の危険がある物質とされているからです。実際に、危険物の中には、比較的低い温度で反応を始める特性を持っている物質もあり、そういったものを安全に保管するためには、決められた温度以下で冷却保管しなければいけません。
また、他にも、危険物の品質を維持するために、一定の温度帯を守らなければならないケースも少なくありませんし、流動性の確保のためや結晶化を防止するため『加温保管』が必要なものまであるなど、危険物倉庫は、保管物品の特性に合わせて温度管理が求められます。
温度管理上の注意点
危険物倉庫での温度管理に関しては、いくつかの注意点が存在します。単に、倉庫内を冷却したり加温したりして、温度を一定に保つということ自体はそこまで難しい事ではありません。
しかし、保管する危険物によっては、温度を維持できなくなれば、火災などの事故に発展してしまう恐れがあるため、万一の設備故障などに備えておく必要があります。例えば、温度管理が必要な部屋は、全て2系統の空調設備を配置しておき、どちらかが故障した場合でも、残りの1系統にて温度管理保管を可能にしておくというような措置が必要なケースもあります。
また、管理温度によっては断熱が必須となりますが、特に天井部分の断熱をパネル等で対応する場合は、危険物倉庫に求められる「放爆構造」について、どのように要件を満たすか所轄の消防署と協議が必要となります。
他にも、庫内への機器設置は防爆が必須となる為、機器を外部設置とするダクト方式との費用対効果の検証や、自然災害による停電などを考えると、非常時の緊急用発電設備なども必要になるでしょう。
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まとめ
今回は、危険物倉庫における温度管理について簡単に解説してきました。この記事でご紹介したように、危険物とは、消防法に定められている「通常の状態で保管・放置しておくと、引火性・発火性があり、火災や爆発、中毒などの災害につながる危険がある物質」のことを指し、さまざまな物質が存在しています。
そして、危険物の中には、比較的低い温度で反応を始めてしまう物質などが存在しており、そういった危険物を保管する倉庫は、一定以下の温度を保てるような機能が必要とされるわけです。なお、危険物は全て低温で保管しなければならない物質ばかりではなく、流動性の確保のためや結晶化を防止するため『加温保管』が必要な物質もあります。
取り扱う危険物に適した温度やどういった設備が倉庫に必要なのかは、専門知識が必要になりますので、まずはお気軽に弊社までお問い合わせください。
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