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機能倉庫建設を軸とした物流課題改善(web版)

機能倉庫建設を軸とした物流課題改善(web版)

投稿日:2021.08.13 
更新日:2021.09.14 
お役立ち情報

物流施設の新設計画では、合理化の追求が最優先課題とされており、大型物流施設などでは建設予算に占める構造体の比率が高いこともあり、建設会社・開発業社は構造体の合理化(経済設計力の向上)に注力して始めている傾向にあります。

しかし、倉庫稼働後の『使い勝手』という目線から考えるといくつかの問題点が存在します。例えば、多くの業態への対応が求められるマルチテナント型大型物流施設においては、”できる限り汎用性のある造り”となるのは、ユーザーからしても最大公約数ではあるものの、最適解ではない…という例が珍しくなく、中にはハード的な制限や法規制などを要因に倉庫が業態にマッチしないというケースまであります。

そこで当社の『リソウコ』は、このようないわゆるニッチなユーザーの受け皿となるべく、汎用性のある倉庫とは一線を画した、取扱物品が特定され使い勝手の決まった倉庫(「機能倉庫」という)に求められる機能を最適化し”JUST SPEC”な倉庫を実現するソリューションブランドとして立ち上げられました。
この記事では、現在の倉庫建設を取り巻く状況や、倉庫に求められている課題、実際にリソウコが取り組んだ倉庫改善事例をご紹介します。

コロナ渦における機能倉庫の需要について

コロナ禍以前は、東京オリンピックが控えていたこともあり、インバウンド効果を見越した空前のホテル(宿泊施設)建設ラッシュが続いていました。しかし、コロナ問題発生以降、一気にその潮流が変わってしまい、2019年の年間着工棟数が2,300棟だったものが、2020年には1,631棟と急落しています。そして新型コロナウイルス問題が長引いている現在、この傾向はさらに加速すると予想されています。

一方、倉庫建設については、2008年のリーマンショックで大幅な減少があったのですが、これ以降は年々着工棟数が増加しており、2016年には年間着工棟数14,067棟と、リーマンショック前の着工棟数(13,982棟)を超えています。さらにコロナ禍の現在でも、『2019年:14,773棟⇒2020年:14,981棟』と、着工棟数の増加傾向が続いています。特に、EC市場の拡大に伴った保管需要の増大への対応やトラックドライバー不足に対応した配送中継拠点の整備を目的として、マルチテナント型大型物流施設の新増設が活況だと言われています。

機能倉庫需要の近況について

倉庫建設については、リソウコのターゲットとなる機能倉庫の中でも、近年は特に危険物倉庫、冷蔵冷凍などの温度管理倉庫の需要が高まっています。上図は、直近3ヵ年における当社への倉庫建設に関する相談問い合わせ件数をグラフ化したものですが、危険物倉庫に関して「4件→9件→23件」、温度管理倉庫は「2件→3件→17件」と、コロナ問題以降は加速度的に増えています。そしてこの勢いは、2020年10月以降も衰えを見せていません。

この状況は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、アルコール消毒剤や医薬品の流通需要が拡大したこと、さらに厚労省による医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインの発出などの影響が大きいと言われています。コロナ以前からコールドチェーンの発達により都心部の温度管理倉庫は満床状態が続いていると言われていたのですが、食品のみならず、医薬品物流にまでその需要が拡大している一方、供給不足がより一層拍車がかかっている状況で、危険物倉庫や温度管理倉庫の建設需要も高まっているという訳です。

危険物倉庫の建設事例

慢性的な機能倉庫の供給不足が続く中、近年では自社敷地内に倉庫を建設したいという相談事例が増加しています。

そこでここでは、2020年に竣工した危険物倉庫建設における物流課題の解決事例をご紹介します。建築主は岡山県にある石油化学製品などの製造を主業とする企業で、以下のような課題を抱えていました。

倉庫建設前に抱えていた課題
工場内には、もともと危険物倉庫があったのですが、保管できる量に法的な制限があり、製造上必要な数量と保管可能数量のバランスがとれていない。そのため、外部倉庫の活用で凌いでいたのですが、製造スケジュールと保管数量に乖離があることに加え、外部倉庫との横持ちやリードタイム、消防申請などが煩雑で、生産能力を最大限に発揮することができないという大きな課題を抱えていました。
そこでこれらの生産プロセス上の課題解決のため、隣地を取得し、そこに新たな危険物倉庫を建設することにした。

保管量を最大化について

危険物倉庫は、『原則平屋建て面積1,000㎡以下』という規制があり、限られた敷地内においては「作業効率を損なうことなく、如何に保管量を最大化するのか?」が課題となります。
本件のケースでは、保管スペース的に1棟でも1,000㎡を超える面積は必要なく、通常であれば1棟建てとした方が規模もコストも、倉庫の使い勝手も優位であるという判断になります。しかし、危険物倉庫には、保有空地という規制の影響があるため必ずしも1棟建てが優位になるとは限りません。

実際に、本件のケースでは、1棟建てとした場合、危険物の保管量から「保有空地は10m必要」となってしまうため、建設可能な床面積が540㎡となります。

一方、2棟建てとした場合、「保有空地は5m」となりますので、2棟合計の床面積は595㎡となります。さらに、面積というメリットだけでなく、1棟あたりの保管量から求められる消防設備が変わるため、コストにも影響を及ぼし、総合的な判断の結果、2棟建てとすることになりました。

※保有空地

消防法で定められた万一の火災の際に安全を確保するために建物周囲に確保が義務付けられた一定の幅の空地のことを指す。保管する危険物の量によってその空地の幅が決まり最大で10mの幅の空地が必要となる。

保管効率と作業効率について

次に考えなければならないのが「獲得した床面積を如何に有効活用するのか?」ということです。単純に保管量の最大化のみを考えた場合、自動ラック倉庫や走行式の移動ラックの採用となるのですが、倉庫規模的に自動ラックを採用するコスト的なメリットがありません。そこで、移動ラックの検討を進めたわけですが、消防との協議の結果、安全性が担保できないという判断から採用が認められず、のこされた選択肢は固定ラックか平置きとなりました。

左図は、倉庫内での保管、運用方法による効率を表したものなのですが、これからも分かるように、平置きの場合は保管量は確保できるが作業効率が悪いという問題が生じます。また、固定ラックにすると、一般的な旋回式のフォークリフトでは旋回スペースを確保しなければならないため、その分の保管量が犠牲になってしまいます。そこで、保管量、作業効率両方を考えた結果、旋回不要のラックフォークを採用することで、目標としていた保管量と無駄のない作業性の確保を実現しました。

さらに、荷捌きスペースを外部庇下に設定することで倉庫内の保管スペースを最大化することができ、旋回式フォークリフト採用時160パレット想定だった最大保管量が75%UPの280パレットを実現しています。

倉庫建設では、「コスト×規模」あるいは「保管効率×作業効率」の最適化が重要なテーマとなるのですが、危険物倉庫は消防法の規制を受けるため、保管品目や保管量によって建設可能な規模や設置する消防設備が変わり、これにコストも大きな影響を受けます。さらに厄介なのが、消防法による規制は、行政区によって判断が変わってしまい、受ける指導が微妙に異なってしまうことが多いということです。そのため、危険物倉庫の設計者は、物流や倉庫建設に関する知見だけでなく、消防法や危険物倉庫そのものに関する深い知識と経験が求められると考えてください。

おわりに

今回は、危険物倉庫や温度管理倉庫のような機能倉庫の需要や実際の建設事例について解説してきました。

危険物倉庫や温度管理倉庫のような機能倉庫の建設は、イニシャルコストの低減はもちろん、一般倉庫と比較して規制やメンテナンス性の向上、ランニングコストの低減など建設時に検討すべきテーマが非常に多岐にわたります。そのため、実際の建設時には実績のある建設会社を求めるものだと思うのですが、特に危険物倉庫はニッチな分野であるだけに専門家が限られているというのが現状です。

リソウコは立ち上げて現在4年目ですが、危険物倉庫を例に挙げるとこの4年間だけでも既に8棟を竣工させ、現在6棟のプロジェクトが進行中です。当社は単なる箱としての倉庫を提供する建設会社ではなく、物流の多様な個別ニーズと向き合い、課題を把握し常に最適解を追求し、機能としての倉庫を提供できる存在であり続けたいと考えています。

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