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危険物倉庫(医薬品等への対応)に空調を設置する際の事前確認ポイント

危険物倉庫(医薬品等への対応)に空調を設置する際の事前確認ポイント

投稿日:2022.06.07 
更新日:2024.04.26 
お役立ち情報

今回は、危険物倉庫の中でも、医薬品等を取り扱う施設について、保管物品の品質を保つための空調設備を設置する際のチェックポイントをいくつかご紹介します。さまざまな製品を保管するための施設である倉庫は、保管する物品の特性に合わせた保管温度帯が保たれるように設計されています。

そして、高齢化が進む日本では、年々医薬品の輸入量が増加しており、医薬品の保管を目的とした倉庫の需要が高まっています。医薬品は、人の健康を維持することや命を助ける目的で製造されている製品ですので、工場などで製造された製品は、患者さんが消費するまでその品質を絶対に保っていなければいけません。日本国内では、2018年に「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」が厚生労働省より発出され、医薬品を安全に保管するための設備投資が急速に進んでいます。ただし、保管する医薬品に最適な温度帯を維持するために、どういった点に着目すれば良いのかいまいち分からない…と言う施設も少なくないと思います。

そこでこの記事では、倉庫などが医薬品を保管するにあたって、適切な温度管理を行うため空調を設置する際のチェックポイントをご紹介します。

医薬品の保管に求められる条件

それではまず、「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」にて、医薬品の保管時に重視しなければならないとされている条件を簡単にご紹介しておきます。なお、「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」の詳細については、以前別の記事でご紹介していますので、「GDPガイドラインがよくわからない?」という方がいれば、先に以下の記事をご参照ください。

関連記事:危険物(医薬品)の保管は温度管理が必須!GDPガイドラインに沿った医薬品保管の基礎知識とは

一般の方であればあまりイメージすることはないのかもしれませんが、医薬品にも適正な保管条件と言うものが存在します。例えば、コロナ禍の現在、日本国民の多くが接種した新型コロナウイルスワクチンについては、超低温下での保管が求められており、ワクチン接種が全国でスタートしたばかりのころには、「保管温度帯を外れてしまったことで廃棄された!」と言ったニュースも報道されていました。
もちろん、医薬品の保管温度帯は製品ごとに異なる温度が設定されていて、例えば一般家庭に常備されているような風邪薬についても保管方法の部分に適正温度などが記載されています。家庭に常備される医薬品については「室温保存」などと記載されているケースが多いのですが、この室温は日本薬局方で1~30℃と定義されています。例えば、この保管温度帯を極端に外れてしまうと、外観上に変化はなくても中身が変質してしまい、本来の効能が得られなくなる危険があるわけです。ちなみに、日本薬局方では室温の他に、常温15~25°C、冷所は1~15°Cと言う貯法が定められています。

参考:厚生労働省「日本薬局方」について

なお、医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインでは、医薬品などを保管する施設について、以下のように指摘されています。

第 3 章 施設及び機器
3.1 原則
卸売販売業者等は、薬局等構造設備規則を遵守するとともに、医薬品の適切な保管及び流通を保証することができるように、適切かつ十分な施設、設備及び機器を保有する必要がある。
特に、施設は清潔で乾燥し、許容可能な温度範囲に維持すること。
引用:医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン

このように、医薬品の保管を行う場所では、適切な品質管理を行うようにと指摘されています。ちなみに、医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインの中では、保管や輸送時の温度などに関する条件が多く記載されていますので、医薬品の保管を行う倉庫などで、空調や温度管理設備への投資が加速しているのだと思います。

具体的にチェックすべきポイント

それでは、医薬品の保管を目的として、倉庫などに空調設備を導入する際、事前にチェックしておくべきポイントをご紹介していきます。上述したように、近年では、医薬品の取り扱いを行う際には、品質を守るために温度管理が求められるケースが多いため、倉庫などでも空調や温度管理設備への投資が加速しています。ただ、何も考えずに高性能な空調設備を導入すれば良いというわけではありませんので、ここでは、空調を設置するまでにチェックしておくべきポイントをご紹介します。

管理上必要な温度は何度か?

上述したように、医薬品の品質を保つためには、保管する物品ごとに適切な管理温度が定められています。そして、品質を保つために「何度で管理しなければならないのか?」と言うポイントはしっかりと押さえておかなければいけません。

と言うのも、管理上必要な温度設定によっては、壁や天井の断熱対策が必要になるのですが、危険物倉庫では、以下のような定めがあることから、基本的に天井の設置が認められません。

危険物の規制に関する政令
(屋内貯蔵所の基準)
第10条
七  貯蔵倉庫は、屋根を不燃材料で造るとともに、金属板その他の軽量な不燃材料でふき、かつ、天井を設けないこと。
引用:e-Gov|危険物の規制に関する政令

したがって、このような場合には、空調のことだけを考えるのではなく、建物の構造などを含めて、所轄消防との事前協議が発生すると考えてください。

上限値だけなのか?下限値もあるのか?

「医薬品を保管するための適正温度」と聞くと、「〇℃を超えてはいけない」など、保管時の上限温度を管理しなければならないと考えがちです。しかし、保管する物品によっては、「〇℃を下回ってはいけない」など、保管する際の下限値が設定されているケースもあります。

したがって、医薬品保管のため、倉庫に空調を設置する際には、この辺りのことまでしっかりと考慮しておく必要があると考えてください。

管理温度は一瞬たりとも逸脱は許されないのか?

保管する医薬品は、最終的に消費者の手元に品質を保ったまま届けなければいけません。適切な温度管理がなされた倉庫内で保管している限り、医薬品の品質を守ることはできますが、消費者の手元に届けることを考えると、配送時の温度管理も重要になるわけです。つまり、医薬品を保管する倉庫では、単に物品を保管する時の温度管理だけを考えているのでは不十分だということです。医薬品の中には、一瞬たりとも管理温度を逸脱することが許されないものもありますので、配送面でも適正温度を維持できるような対策を考えておかなければいけません。

例えば、ドッグシェルターが無い施設であれば、トラックに積み込みを行う際、外気に暴露してしまうことになるので、ここで管理温度を逸脱してしまいます。また、保冷庫前室の温度管理ができていないなどと言う理由で管理温度を逸脱してしまうケースも考えられます。
こういったこともあり、厳しい温度管理が必要な施設では、どのようにして温度管理のコントロールレベルを上げるのかを事前に検討しておかなければいけません。もちろん、前室を設けるという方法が安全ですが、前室を設けてしまうと有効な保管量が減少してしまうなどのデメリットも考えられます。したがって、ドッグシェルターやエアカーテンを設置する、空調機のスペックを高くして積み込み時の温度逸脱を防ぐなど、配送面の計画も策定しておく必要があります。

開口部(シャッターや扉)の開閉頻度はどの程度か?

開口部の開閉頻度が高ければ高いほど、外気が侵入してしまう可能性が高くなりますので、一定の温度を保つのが難しくなります。したがって、保管する医薬品の需要なども考慮して、開閉頻度が高ければ空調機のスペックを高くするなどの調整が必要だと考えておきましょう。

まとめ

今回は、医薬品を保管する倉庫において、保管物品の品質を保つための空調を設置する前にチェックしておきたいポイントをご紹介してきました。

この記事でご紹介したように、高齢化が進む日本では、年々医薬品の輸入量が増加しており、これらを保管するための倉庫需要もどんどん高くなっています。ただ、医薬品は、人の命に係わる製品ですので、品質を守るためには非常に厳しい温度管理が求められています。記憶に新しい例を挙げると、多くの日本国民が接種した新型コロナウイルスワクチンは、数時間だけ管理温度から逸脱しただけで、廃棄されてしまったというニュースを見かけたことがある人も多い事でしょう。

こういったことから、医薬品を保管する倉庫では、空調や温度管理設備への投資が加速しているのですが、実際に空調を設置することを検討した場合には、この記事でご紹介したポイントもよく検討しておかなければならないと考えてください。
危険物倉庫建設のポイントはこちら

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