4温度帯とは?医薬品・医療機器・治験薬の物流に必須の低温倉庫
投稿日:2022.11.08
更新日:2024.06.21
お役立ち情報
今回は、医薬品や医療機器、治験薬の物流において、非常に重要になる温度管理について、物流業界に存在する『4温度帯』の概要をご紹介します。
日本国内では、2018年12月に、厚生労働省より「医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインについて」として、正式にGDPガイドラインが発出されています。GDPは、製造工場で作られた医薬品などが工場から出荷された後、それを使用する患者さんの手元に届くまでの流通過程における品質保証を目的とした指針です。そして、このGDPガイドラインの中では、医薬品などの『保管』『輸送』における温度管理についても定められています。
この記事では、物流業務に携わる方が、正しく理解しておきたい温度管理について、主に3温度帯と4温度帯、それぞれの基準や相違点などについて解説します。
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Contents
3温度帯と4温度帯について
それでは、物流における「3温度帯」と「4温度帯」について、それぞれご紹介します。
3温度帯について
3温度帯は、『常温・冷蔵・冷凍』の3つの温度帯に分けられた区分のことを指している物流用語です。それぞれの温度帯について、一般的にどの程度の温度を指しているのかも以下でご紹介します。
- 常温・・・10~15℃(または20℃)の温度帯を指しています。ドライとも呼ばれます。
- 冷蔵・・・5~-5℃の温度帯を指しています。チルドとも呼ばれています。
- 冷凍・・・-15℃以下の温度帯を指しています。フローズンとも呼ばれています。
3温度帯は、上記のような区分となります。なお、冷蔵、冷凍温度帯については、その下位にさらに詳細な管理区分が存在しています。
3温度帯は、品質管理のために厳密な温度管理が求められる食品物流業界などを中心に管理されています。例えば、肉や魚などの生鮮食品は、温度管理の有無が食品の品質に大きく関わってきます。したがって、食品ごとにふさわしい管理方法を荷主から求められることになり、上記のような3温度帯の管理を慎重に行わなければいけません。
4温度帯について
『4温度帯』は、上述した3温度帯である「常温・冷蔵・冷凍」という区分に、『定温』を加えて4つの温度帯区分になったものを指しています。
定温については、温度という定義よりも、保管や配送など、物流における各工程において『一定の温度と湿度で保つ』というのが大まかな意味合いになります。とはいえ、温度の範囲が一切考えられていないのかというとそうではなく、一般的には10℃~20℃ぐらいの範囲で扱うことが多いと考えておきましょう。4温度帯の定温については、物品によって指定の定温温度が変わる場合や、配送業者によって定義されている定温温度が変わることがあります。ただ、いかなる場合でも、「一定の温度と湿度を保つ」ということには変わりありません。
医薬品などの物流において、4温度帯が重要視されているのは、ワクチン製剤などの医薬品輸送では、生鮮食品などと同じく特に厳しい条件が求められるからです。例えば、医薬品メーカーで製造された医薬品が工場から出荷され、物流センター、各物流業者支店を経て、医療機関や調剤薬局などに配送されていく中で、決められた管理温度域の基準を超えることができません。ものによっては、管理温度域から「±2℃」の逸脱があっただけで廃棄処分にしなければならないものもあり、徹底した管理が求められています。
ちなみに、定温輸送の登場は、鮮度の高い生鮮食品がスーパーなどでも簡単に手に入れられるようになったほか、温度変化によって大きなダメージを受けてしまう美術品などなどの輸送にも役立っています。
3温度帯と4温度帯の相違点
3温度帯と4温度帯の相違点については、上で紹介したそれぞれの概要を見れば一目瞭然です。4温度帯には、3温度帯に含まれていない『定温』という概念が定められていることが両者の違いです。
定温については、上述した通り、温度の定義というよりも「一定の温度・湿度に保つ」ことを意味しており、一般的に冷蔵ほどは冷やさない程度での保管が望ましい商品が取り扱われます。なお、定温の温度設定については、保管する物品ごとに異なります。
定温については、『常温』の概念と同じようなものと認識されるケースがあるのですが、これは違います。常温は、基準が屋外の気温となり、室内の温度は特にコントロールされることが無いため、季節によって温度環境は大きく変わります。日本工業規格(JIS)では、「常温:15~25℃」としていますが、各倉庫の立地条件や配送業者、取り扱う物品などによって、基準が異なるケースもあります。
保管温度帯による倉庫の機能について
ここまでは、物流における「3温度帯」と「4温度帯」の詳細についてご紹介しました。こういった温度に関する基準は、商品によっては温度の変化で品質が大きく損なわれてしまうものがあることから、保管や輸送においても品質をきちんと保つために作られています。
そして、物流の拠点となる倉庫についても、保管温度帯を考慮して各種機能が備えられています。ここでは、保管温度帯ごとの倉庫の特徴を簡単にご紹介します。
常温倉庫
常温倉庫は、温度や湿度などの調整がされていない倉庫を指しています。倉庫内の温度については、立地条件によって多少異なりますが、一般的に冬場は5度前後、夏場になると30℃近くまで上がることがあります。常温倉庫は、室温が屋外の気温と連動して上下することから、1年を通して倉庫内の環境が大きく変わります。
常温倉庫では、一般的に、缶詰や缶ジュース、食料油、非常食や保存食、紙製品や金属製品など、温度や湿度の変化によって大きな影響を受けない商品の保管が行われます。
定温倉庫(低温倉庫)
定温倉庫は、温度と湿度が一定の状態に保たれている倉庫のことを指しています。倉庫内の温度については、各倉庫の規定や保管する物品の特性などによって異なるのですが、基本的に常温よりも低い10~20℃の中でキープされる場合がほとんどです。
定温倉庫では、生鮮食品や果物などの食品類が主に保管されています。また他にも、温度変化によって品質が大きく変わってしまうワインやチョコレートなども定温倉庫で保管される代表的な物品です。さらに最近では、高温や低温、温度変化に弱い医薬品などを保管する倉庫として需要が高まっています。
冷蔵倉庫
10℃以下の定温で物品を保管する倉庫が冷蔵倉庫です。倉庫業法施行規則による分類では、10℃以下の温度で物品を保管する倉庫は、全て冷蔵倉庫に区分されるのですが、分かりやすくするため冷蔵倉庫と冷凍倉庫に分けて呼ぶ場合もあります。そして、保管温度帯が10℃から-20℃未満の倉庫をC級(チルド)として、これらが冷蔵倉庫に該当します。
冷凍倉庫
冷蔵倉庫の中でも、特に低い温度に設定された倉庫が冷凍倉庫と呼ばれます。冷凍倉庫は、F級(フローズン)と呼ばれる区分の倉庫で、-20℃以下に設定されています。さらに、-40以下で管理される倉庫については、超低温倉庫などとも呼ばれています。
冷凍倉庫に保管される物品は、肉類や魚介類、冷凍食品やアイスクリームなど、食品関係のものが多いです。ただ最近では、超低温で保管する事が求められる医薬品などが登場しており、冷凍倉庫は医薬品物流の面でも年々その重要性が高くなっていると言われています。皆さんも記憶に新しいと思いますが、新型コロナウイルスワクチンは、-75℃以下の超低温で保管が求められていました。
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まとめ
今回は、物流における温度管理の基準となる3温度帯と4温度帯について解説しました。
皆さんもご存知の通り、保管や配送を行う際、決められた温度帯を逸脱してしまうことで品質が損なわれてしまう物品はたくさん存在しています。例えば、冷凍食品の配送を行う時に、冷凍車両ではなく一般の配送トラックに載せて運んだとすれば、全ての食品がダメになってしまい廃棄せざるを得ない状況になってしまうことでしょう。
保管や配送における温度管理の進化は、長距離の移動でも物品の品質を保つことができるようになり、我々の日常生活を非常に豊かにしてくれています。そして近年では、医薬品や医療機器・治験薬などの物流において、特に厳しい温度管理が求められるようになっています。一般的なワクチン製剤などの医薬品輸送では、2℃〜8℃という非常に厳しい管理温度域が設定されており、少しでも温度を逸脱してしまうと、廃棄処分にしなければならないため、徹底した温度管理が求められているわけです。
倉庫は、多くの物品を保管できる広いスペースがあれば良いと考える方も多いのですが、昨今の物流業界では、さまざまな機能性が求められるようになっています。RiSOKOでは、保管物品に合わせたジャストスペックの倉庫をご提案していますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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