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危険物(医薬品)の保管は温度管理が必須!GDPガイドラインに沿った医薬品保管の基礎知識とは

危険物(医薬品)の保管は温度管理が必須!GDPガイドラインに沿った医薬品保管の基礎知識とは

投稿日:2022.04.13 
更新日:2023.11.07 
お役立ち情報

近年、医薬品の保管にあたって、倉庫への空調設備や温度管理設備の導入相談が増えてきています。倉庫業界以外で働いている方であれば、「倉庫内の温度は厳しい管理が行われている」と言うイメージがあまりないかもしれません。しかし、倉庫で保管する物品は、商品特性によって保管に適した温度と言うものがありますので、各倉庫ごとに保管温度帯が設定され、それらが守られるような設備が整えられています。

そして2018年12月に、医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインが発出されたこともあり、医薬品の保管を目的とした設備投資が進んでいます。GDPとは、製造された医薬品が、患者さんの手元に届くまでの流通過程において、医薬品の品質保証を目的にした基本的な指針となります。日本国内では、厚生労働省が発出した「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」により、品質管理や流通経路の管理手法が定められています。

この記事では、医薬品を保管する際の温度管理について解説していきます。

GDPとは?

それではまず、厚生労働省から発出された日本版「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」について、これがどういったものなのかを簡単に解説しておきます。GDPガイドラインの目的については、以下のように示されています。

高水準の品質保証の維持と医薬品の流通過程での完全性を保証するため、卸売販売業者等の業務の画一性を推進し、医薬品取引における障害をさらに除くための参考となる手法として、本ガイドラインを作成した。
本ガイドラインは、卸売販売業者等がそれぞれのニーズに合わせた規則を作るための根拠としても利用することを意図している。
引用:厚生労働省「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」より

医薬品と言うものは、人の命に係わる製品ですので、非常に厳重な規則が定められており、徹底した管理の元、製造がおこなわれています。しかし、「医薬品を実際に使用する患者さんの手元に届くまで」のことを考えた場合、医薬品の品質管理は、製造過程だけに注目するのでは不十分です。例えば、低温下で保管しなければいけない医薬品を常温で保管していれば、品質が低下してしまい、本来の効果が得られないどころか、人体に悪影響が生じてしまう可能性があります。したがって、医薬品の品質を守るため、製造過程以外について、保管や流通、販売など、全ての場面における品質管理の基準が設けられているわけです。

GDPの重要性がよくわかる事例については、今回の新型コロナウイルスワクチンの輸送・保管を考えてみると良いでしょう。新型コロナウイルスワクチンの中には、超低温で保管しなければならないものがあったのですが、全国の接種場所に配布され、現地で保管する際、適切な保管温度を守れていなかったことから、大切なワクチンを廃棄処分しなければならなくなったというニュースが何度も報道されていました。なお、ワクチンの廃棄については、以下のような信じられないようなミスが原因となっていました。

  • ワクチンを保管するための保冷庫の電源プラグが脱落し、保管温度帯を逸脱していた
  • 接種会場での受け渡しは、保冷容器に入れたまま引き渡すルールなのに、中身を出し引き渡した。その後、2時間放置された

新型コロナウイルスワクチンについては、上記のようなミスで温度管理がなされなくなり、廃棄処分にされてしまったという事例が全国で続出しています。医薬品は、それを使用する患者さんの手元に届くまで、厳重な品質管理がなされていることが非常に重要ですので、全ての場面で適切な品質管理ができるよう『GDP(Good Distribution Practice)』が定められたわけです。

医薬品の『保管』に求められる条件

それでは、医薬品を保管する際の適切な条件について、「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」からピックアップしてご紹介しておきましょう。冒頭でご紹介したように、近年では、弊社においても、医薬品の保管にあたって空調設備や、温度管理設備などの導入相談が増加しています。

それでは、医薬品の保管を行う倉庫については、どのような条件が求められるのでしょうか?以下でご紹介しておきます。

医薬品の保管に求められる条件

医薬品の保管に求められる条件については、「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」の3章部分で解説されていますので、詳細は医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインをご参照ください。ここでは、医薬品の保管時に、特に重視しておきたいポイントをガイドラインからピックアップしておきます。

  • 施設は清潔で乾燥し、許容可能な温度範囲に維持すること
  • 保管場所は全ての作業を正確かつ安全に遂行できるように適切な照明と換気の設備を備えること
  • 医薬品の貯蔵設備は、他の区域から明確に区別されていること
  • 受入れ場所及び発送場所は、気象条件の影響から医薬品を保護できること
  • 医薬品の貯蔵設備は、当該区域に立ち入ることができる者を特定し、立入りは権限を与えられた職員のみに限定し、立ち入る際の方法をあらかじめ定めておくこと
  • 施設は、昆虫、げっ歯類、又は他の動物の侵入を防止できるように設計し、設備を整備すること
  • 医薬品を保管する環境を管理するための適切な手順を定め、必要な機器を設置すること。考慮すべき因子として、施設の温度、照明、湿度及び清潔さを含む。
  • 保管場所の使用前に、適切な条件下で温度マッピングを実施すること
  • 温度モニタリング機器(例えばデータロガー)は、温度マッピングの結果に従って適切な場所に設置すること
  • あらかじめ定められた保管条件からの逸脱が発生した際に警告を発する適切な警報システムを備えること
  • 数平方メートル程度の小規模な施設の室温については、潜在的リスク(例えば、ヒーターやエアコン)の評価を実施し、その結果に応じて温度センサーを設置すること

このように、医薬品の保管を行う場所は、適切な品質管理がなされるよう、さまざまな条件が指摘されています。特に温度に関する条件が多いので、医薬品の保管にあたって、空調や温度管理設備への投資が加速しているのだと思います。
なお、上記以外にもさまざまな条件がありますので、「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」はきちんと確認しておきましょう。

参照資料:厚生労働省「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン

まとめ

今回は、ここ最近増加してきた、医薬品の保管を目的とした倉庫での空調設備や、温度管理設備の導入の背景について解説してきました。この記事でご紹介したように、医薬品は人の命に係わる製品ですので、製造工程はもちろん、保管や流通、販売と言った場面でも適切な品質管理が行われなければいけません。例えば、決められた保管温度帯を守れていなければ、コロナウイルスワクチンのように大量廃棄処分となってしまいます。

なお、医薬品の保管について、新型コロナウイルス感染症拡大以後、その需要が非常に高くなっている消毒用アルコールですが、アルコールの濃度が60%以上(重量%)の製品については、危険物に該当しますので、貯蔵・取扱いする数量に応じて許可申請または届出が必要になるという点も頭に入れておきましょう。消毒用アルコールの取り扱いについては、東京消防庁の特設サイトで分かりやすく紹介されていますので、以下のページを確認しておくと良いでしょう。

参照:東京消防庁「消毒用アルコールの貯蔵に係る運用について

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