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荷主が食品倉庫・医薬品倉庫に求める衛生管理と対策を解説

荷主が食品倉庫・医薬品倉庫に求める衛生管理と対策を解説

投稿日:2023.12.10 
更新日:2024.03.19 
お役立ち情報

2018年に改正が行われた食品衛生法では、すべての食品関連事業者に対して、HACCPを用いた衛生管理を求めるようになっており、この影響は食品を扱う物流業界にも及んでいます。

食品の保管を担う食品倉庫でも、HACCPへの対応など、非常に高度な衛生管理体制が求められています。

倉庫で取り扱う製品は、既に包装が完了しているため、異物混入の危険性は製造現場よりも低くなります。しかし、製品を輸送・保管する過程において品質の劣化を起こさないためには、保管場所の適切な温度管理が求められます。例えば、2023年のクリスマスには、大手百貨店が販売したクリスマスケーキが、保管もしくは輸送中に適切な温度帯を逸脱したことで、顧客のもとに届くころにはケーキが本来の形状を保てなくなっていた…1という問題が発生し、SNS上で大きな話題となりました。

食品や医薬品、精密機械などは、保管・輸送時の温度変化による影響を受けやすいという特徴があることから、近年では倉庫にも「食品工場の衛生管理レベル」を荷主が求めるようになっています。そこで当記事では、食品倉庫や医薬品倉庫に求められる衛生管理体制について解説します。

 

※1

大手百貨店が販売したクリスマスケーキが、顧客のもとに届いた時には、本来の形状が保たれておらず、大きな話題となった事件です。ケーキは、約2900件の発注があったとのことですが、形状が崩れているというクレームは、なんと約3割となる900件(25日午後8時まで)もあったとのことです。このケーキは、冷凍の温度帯で保管・輸送される想定だったのですが、保管もしくは輸送どちらかの場面で冷凍温度帯を逸脱したのではないかという指摘が多いです。なお、記事作成時点の12月26日までの発表では、「原因を調査中」とのことです。

 

食品倉庫・医薬品倉庫に求められる機能

それでは、食品倉庫や医薬品倉庫が荷主から求められている機能性について解説します。

 

厳密な温度管理が求められる

物流業界でも、非常に高度な温度管理が求められるようになっています。ただ、取り扱う製品によって、温度管理に求められる要素が異なるので、その点は注意しましょう。

  • 食品の保管
    食品の劣化を防ぎ、鮮度を維持するためには温度管理が重要です。食品の適切な温度帯を逸脱すると、鮮度が低下するだけでなく、微生物などが増加して食中毒事故を引き起こす危険性が高くなります。したがって、食品工場に限らず、食品の物流を担う施設でも、適切な保管温度帯を維持できる機能性が求められています。
  • 医薬品の保管
    医薬品も、品質に悪影響が及ばないよう、輸送・保管時に適切な温度管理を行うことが求められます。医薬品の中には、温度変化によって品質に影響を及ぼすものがあります。医薬品の物流に関しては、『医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン』が策定されていますが、この中でも輸送・保管中における温度管理について定められています。

食品倉庫や医薬品倉庫は、保管する製品の品質を維持するため、温度管理機能が求められるようになっています。当然、保管する製品の種類によって、適切な温度帯が異なるため、保管物品に合わせた温度帯を維持できる機能を持たせます。

なお、食品や医薬品以外でも、精密機器の輸送・保管においても温度管理が求められます。精密機器は、高温多湿な環境下で保管すると、内部で結露が発生し、錆や腐食などの品質劣化につながる恐れがあるからです。また、湿度が低すぎると静電気が発生しやすくなり、機器の故障につながる可能性が高くなります。
このように、「さまざまな製品を保管するだけの施設」と考えられがちな倉庫ですが、製品の品質を維持するため、製造現場並みに厳しい温度管理が求められるようになっています。

 

保管倉庫の衛生管理について

食品や医薬品を保管する倉庫でも、食品工場レベルの衛生管理体制が求められています。例えば、製品への意図しない異物の混入を防ぐ、また意図的な異物混入を防ぐための衛生管理とセキュリティの強化が求められます。

例えば、厚生労働省が策定した医薬品流通基準である日本版GDPガイドラインの中でも、施設に関する項目で、以下のように定められています。

3.2.9 施設及び保管設備は清潔に保ち、ごみや塵埃がないようにすること。
清掃の手順書と記録を作成すること。
洗浄は汚染の原因を防止するよう実施すること。

3.2.10 施設は、昆虫、げっ歯類、又は他の動物の侵入を防止できるように設計し、設
備を整備すること。
防虫及び防そ管理手順を作成すること。
適切な防虫及び防そ管理記録を保持すること。

 
引用:医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン

 

食品倉庫、医薬品倉庫には、高い衛生管理体制が求められるようになっており、単に清掃の記録を残すだけでなく、清掃や防虫管理に関する手順書などを策定し、きちんと作業を行う従業員に周知することが大切とされています。

なお、意図的な異物混入への対策については、意外に見落とされているケースが多いです。昨今では、食品の製造現場では「フードディフェンス」への対応が急務と言われるようになっていて、製品を保管する施設でも、この部分の強化が荷主から求められる可能性が今後高くなっていくと予想されます。フードディフェンスが何を意味していて、どのような対策が必要なのかは、弊社が運営する別サイトで詳しく解説していますので、以下の記事も確認してください。

 
関連:フードディフェンスの重要性と基本的な考え方

 

食品倉庫・医薬品倉庫の衛生管理に役立つ設備について

それでは最後に、食品倉庫・医薬品倉庫の衛生管理に役立つ具体的な設備をいくつか紹介します。ここまでの解説で分かるように、食品や医薬品の保管を担う倉庫では、温度管理以外にも、埃や粉塵、防虫管理などが求められます。

 

防虫管理に役立つエアーフェンス

倉庫は、単に荷物の保管を行うだけでなく、保管する製品の入庫、またその逆に製品の出荷が頻繁に行われます。倉庫の中には、入出庫作業が効率的に行えるように、搬入・搬出口を常に開放している場合もあります。しかし、倉庫の開口部は、温度管理を難しくする点や害虫の侵入経路となるなど、温度・衛生管理上の大きな弱点になる可能性があります。

上記の問題を解消するため、倉庫の出入り口を利用する際に、エアーを噴出することで虫や異物の侵入を防いでくれる設備が存在します。

エアーフェンス

左図のように、出入口の両側に設置された吹出口から強いエアーを中央に向けて吹出し、壁を作るという製品となります。両側からエアーを吹出し、気流でエアーゾーンを形成するため、人や車、荷物などの通過時に、外部から昆虫などが侵入するのを防ぐことができます。

詳細は、メーカーサイトでご確認ください。

 

人に付着した異物の除去

施設内への異物の侵入は、そこで働く従業員の衣服などに付着して…といったケースが考えられます。食品工場などでは、製造エリアに入る前にエアシャワーで衣服に付着した埃や髪の毛を除去します。食品倉庫や医薬品倉庫は、エアシャワーほどの設備を設置するのは難しいので、これに変わる従業員の衛生管理対策を検討すべきです。例えば、以下のような製品が販売されていますので、設置を検討しましょう。

エアシャワー

これは、衣服に付着した埃やゴミを吸い取ってくれる掃除機のような物です。先端に回転ブラシが取り付けられていることから、衣服のシワや折り目に入り込んだホコリなどもかき出して除去することが可能です。衛生度が高いエリアに入る前に、従業員が自分に付着した埃、ゴミを除去することができ、異物混入事故などを防ぐことができます。

> メーカーサイト

 

まとめ

今回は、食品や医薬品を保管する倉庫に求められる機能性について解説しました。記事内でご紹介したように、昨今では、荷物の保管を担う倉庫も食品工場などの製造現場並みの衛生管理体制が求められるようになっています。

実際に、HACCPは、食品の製造を担う工場や飲食店だけを義務化の対象としているのではなく、食品物流に関連する施設など全ての食品関連事業者が対象となっています。また、医薬品の物流に関しては、厚生労働省が日本版GDPガイドラインを策定しており、その中で医薬品の保管を担う倉庫に対して、高度な温度管理や衛生管理について定めています。

倉庫は、ただ単に大量の荷物を保管できるだけのスペースが求められるのではなく、保管する製品の品質や安全性を保てる機能が必要不可欠になっています。

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