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危険物倉庫の換気設備について

危険物倉庫の換気設備について

投稿日:2021.12.28 
更新日:2024.03.21 
お役立ち情報

危険物倉庫は、その名称からイメージできる通り「危険物を保管する倉庫全般」のことを指しています。なお、危険物倉庫で保管する『危険物』とは、毒物や劇物などをイメージする方が多いのですがそうではなく、消防法で定められた「通常の状態で保管・放置しておくと、引火性・発火性があり、火災や爆発、中毒などの災害につながる危険がある物質」を指しています。
そして、危険物倉庫は、消防法や建築基準法を始めとしたさまざまな法令、条例に基づいて建設しなければならず、一般的な倉庫などでは求められない機能が必要とされます。ここでは、危険物倉庫に求められる『換気設備』について簡単にご紹介しておきます。

危険物を取り扱う施設の種類について

それではまず、危険物を取り扱うことができる施設の種類をご紹介します。危険物を取り扱う施設は、危険物施設などと呼ばれるのですが、大きく分けて製造所、貯蔵所、取扱所の3種類が存在しています。
以下にそれぞれの危険物施設の役割を簡単にご紹介します。

製造所
危険物を製造する施設のことを指しています。

貯蔵所
危険物を貯蔵・取り扱いする施設のことを指しています。なお貯蔵所は、「屋内貯蔵所(油庫)」「屋外貯蔵所」「屋内タンク貯蔵所」「屋外タンク貯蔵所」「地下タンク貯蔵所」「簡易タンク貯蔵所」「移動タンク貯蔵所」の7種類があります。

取扱所
危険物を取り扱う施設のことで、「給油取扱所(ガソリンスタンド)」「販売取扱所」「移送取扱所」「一般取扱所(ボイラー室)」の4種類があります。

危険物を取り扱う施設は、上記のような種類があり、危険物倉庫はこの中で『貯蔵所』に該当します。

なお、危険物倉庫は「火災や爆発の原因となりうる物質を保管する」ということが目的の施設ですので、施設の設備基準が厳格に定められています。以下に、屋内貯蔵所に求められる構造や設備の基準も簡単にご紹介します。

構造の基準

  • 軒高(のきだか):6m未満の平屋建にする。
  • 床面積:1000㎡以下とする。
  • 屋根:軽量な金属板など、不燃材料を用いる。また天井は設けてはいけない。(爆発が起きても、爆風が屋根を抜けていくようにするため)
  • 壁や梁:壁、柱、床は耐火構造(鉄筋コンクリート造など)で造る。また、梁は不燃材料(コンクリートなど)で造る。
  • 窓:窓ガラスは、網入りガラスを用いる。
  • 床:危険物が浸透していかない構造で、傾斜をつけ、漏れた危険物を貯められるように『ためます』などを設ける。

設備の基準

  • 避雷設備を設ける。(指定数量が10倍以上の施設のみ)
  • 引火点70℃未満の危険物を貯蔵する場合は、蒸気排出設備を設ける。
  • 採光設備や照明によって危険物を取り扱うのに必要な明るさを確保する。

危険物倉庫の換気設備について

それでは、危険物倉庫における換気設備の基準についてもう少し詳しくご紹介していきましょう。
消防法では、「採光、照明、換気設備及び排出設備」として以下のように定めています。

貯蔵倉庫には、危険物を貯蔵し、又は取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設けるとともに、引火点が 70’C未満の危険物の貯蔵倉庫にあっては、内部に滞留した可燃性の蒸気を屋根上に排出する設備を設けること。
(政令第 10条第 1項第 12号)

16. 1 採光及び照明設備の基準「必要な採光Jを屋根面にとる場合は、製造所の例による。
※ 照明設備を設けなくても危険物の取扱いに支障がなければ、採光設備を設けないことができる。

16. 2 換気設備及び排出設備の基準
換気設備及び排出設備については、別記「製造所等の換気設備、可燃性蒸気等の排出設備設置に係る運用基準J(平成 20年 3月 14日付大消予第 66号)による。

引用:屋内貯蔵所の位置、 構造及び設備の基準より(大津市)

換気設備及び排出設備の基準について例えば京都市では、以下のようになっています。

1 換気設備
⑴ 換気設備の種類
ア 自然換気設備とは,給気口及び排気口により構成されるものをいうこと。
イ 強制換気設備とは,給気口並びに排気口及びベンチレータにより構成されるものをいうこと。
ウ 自動強制換気設備とは,給気口並びに排気口及び動力ファンにより構成されるものをいうこと。

⑵ 換気設備により室内の空気を有効に置換することができ,室温を上昇させないようにするため,危険物の貯蔵,取扱状態等に応じた適当な換気設備を選ぶとともに,当該換気設備を適正な位置に設置すること。

⑶ 換気能力は,1時間当たりおおむね5回以上であること。(自然換気設備を除く。)なお,強制換気設備の換気能力の確認においては,風速を1.6m/s(京都市の平均風速)とすること。

⑷ 自動強制換気設備は,常時運転されているものであること。

2 可燃性蒸気等の排出設備の種類
⑴ 可燃性蒸気等の排出設備の種類
ア 強制排出設備とは、排気口及びベンチレータにより構成されるものをいうこと。
イ 自動強制排出設備とは、排気口及び動力ファンにより構成されるものであること。

⑵ 自動強制排出設備は、製造所等において危険物を貯蔵し、又は、取り扱っている場合に、必ず動力により運転されているものであること。ただし,動力により運転しないときでも強制排出設備としての機能を有するもので,かつ,動力ファンのスイッチを照明のスイッチ等と連動させるものとするときは,危険物の取扱い(容器の出し入れを含む。)がないときに限り運転を停止することができる。
引用:換気設備及び可燃性蒸気等の排出設備の設置基準(京都市)

換気設備及び可燃性蒸気等の排出設備の設置基準については以下のようになっています。


引用:換気設備及び可燃性蒸気等の排出設備の設置基準(京都市)

まとめ

今回は、危険物倉庫における換気設備について解説してきました。この記事でご紹介したように、火災や爆発の可能性があり、人命に強く関係する危険物を保管する施設では、可能な限り事故の発生を防ぐため、厳しい設備基準やルールが設けられています。
なお、危険物施設の設備基準やルールに関しては、地域ごとに具体的かつ詳細な定めがあるため、実績に伴う幅広い専門知識が必要になります。
今回ご紹介した換気設備に関しても、求められる換気回数(1時間あたりに庫内の空気が入れ替わる回数)によって設備の仕様も変わり、コストにも影響を与えますので、所轄の消防局との個別具体的な確認が必須となります。

危険物倉庫建設の際は、専門業者に相談するべきと考えておきましょう。

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