物流倉庫に換気設備は必要?換気がもたらす効果と具体的な手段について
投稿日:2022.10.26
更新日:2022.12.26
お役立ち情報
今回は、物流倉庫など、「人が住む」ことを目的としているわけではない建物について、換気設備が必要なのかを考えます。
もともと木造住宅が多い日本では、通気性が良い家が多いことから、機械による24時間換気システムの設置義務などなかったのですが、高気密・高断熱の家づくりが当たり前になったことで、2003年の建築基準法改正により「すべての住宅に24時間換気システムを導入すること」が義務化されています。これは、日本の住宅の高気密化が進んだことで、建材に含まれる化学物質により、シックハウス症候群の危険性が増してしまったことが要因です。要は、高気密・高断熱の家でも、人が健康的に過ごせるよう考慮した結果、適切な換気機能が必要だと考えられ、24時間換気の設置が義務付けられました。
それでは、物流倉庫などに関しては、こういった換気設備の設置は必要なのでしょうか?倉庫は『モノ』を保管する場所ですので、シックハウス症候群の心配はないし「換気設備は不要」と考えている方も少なくないと思います。しかし実は、倉庫に関しても、一定の条件下では「居室」とみなされてしまうことから、換気設備が必要になる場合がありますし、そうでなくても保管するモノの状態を保つためには換気が必要なケースも少なくありません。さらに、新型コロナウイルス問題の発生以降、感染予防の面からも換気設備が重要とされるようになっています。そこでこの記事では、倉庫における換気設備の必要性について解説します。
Contents
倉庫に換気設備は必要ない?
それではまず、モノを保管するための施設である倉庫について、換気設備の必要性をいくつかの視点で考えていきましょう。コロナ禍の現在、どのような建物でも、建物内で人が活動するのであれば、小まめな換気が必要と考えられるようになっています。もちろん倉庫についても、中で従業員が仕分けや梱包などの作業を行う施設が多いですし、感染症対策の面を考えると、小まめな換気が必要不可欠だと言えるでしょう。
ここでは、そもそも「法律的に倉庫に換気設備は必要なのか?」や「感染症予防のために換気は必要か?」と言った視点で換気設備の必要性を考えてみましょう。
法律的に倉庫は換気設備が必要?
基本的に、換気設備が必要になる建物は、建築基準法で『居室』と定められる場合です。建築基準法2条4号では、「居住、作業、娯楽などの目的のために継続的に使用する室のこと」を居室と定めており、居住を目的とする居室については、採光に関する基準(建築基準法第28条第1項)および、換気に関する基準(建築基準法第28条第2項)をクリアしなければならないと定めています。
一方、倉庫と言うのは「物品を保管・貯蔵するための建物」と定義されており、物品のみを保管する施設であれば、基本的には居室ではありませんので、建築基準法上では換気設備が必要とはみなされません。ただ、倉庫に事務所などが併設されている場合は居室とみなされますので、換気設備が必要と考えてください。そして、倉庫に分類される施設の中でも『物流センター』など、施設内で人が仕分けや梱包作業を継続的に行うような場合、換気設備は必要と考えるべきでしょう。
参照:e-Gov|建築基準法
倉庫のコロナ対策は換気が重要
新型コロナウイルス問題発生以降は、感染予防のために『換気』が非常に重要とされたのは皆さんの記憶にも新しいと思います。新型コロナウイルスの集団感染については、”人が密集する空間で換気が悪い状態”と言うのが大きな要因とされていることから、ここ数年はテレビなどでも「小まめな換気を!」と言ったセリフを耳にする機会が多いです。
倉庫業の新型コロナウイルス対策については、日本倉庫協会が感染予防対策ガイドラインを公表しており、換気について以下のように言及されています。
室内では換気を徹底する。適切な空調設備を活用した常時換気又はこまめな換気(1 時間に 2 回以上、かつ、1 回に 5 分間以上)の徹底し、乾燥する場面では、湿度 40%以上を目安に加湿する。CO2 測定装置の設置と常時モニター(1000ppm 以下)の活用も検討する。(※機械換気の場合。窓開け換気の場合は目安。)なお、CO2 測定装置を設置する場合、室内の複数箇所で測定し特に換気が不十分となりやすい場所に設置する。また、HEPA フィルタ式空気清浄機やサーキュレーターの補助的併用も検討する。
引用:倉庫業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン
このように、法律上、換気設備が不要な倉庫の場合でも、中で人が作業する空間である以上、感染症予防の視点から換気設備の導入が必要不可欠だと言われるようになっています。
換気を行うメリット
ここまでは、「倉庫に換気設備が必要とされるのか?」について解説してきました。上述したように、法律的に換気設備が義務でない施設であっても、コロナ問題以降は小まめな換気が必要とされるようになっています。ただ、新型コロナウイルスの感染予防対策を問わずに、本来、適切に換気を行い、空気の入れ替えを行うことには、たくさんのメリットが存在しているのはご存知でしょうか?
ここでは、倉庫などで適切な換気を行うことで得られるメリットを簡単にご紹介しておきます。
- 感染症予防
昨今、どのよう施設でも感染症予防の面で、施設の換気機能が重要視されています。上述しているように、感染予防対策ガイドラインで換気について言及されているなど、倉庫に適切な換気設備を導入するというのは、そこで働く従業員の健康を守ることにつながるというメリットが得られます。 - 脱臭効果
倉庫に保管する物品によっては、強い臭いを発生させるものがあります。例えば、タイヤなどのゴム臭さや、食品の生臭さなどです。こういった匂いについて、空気の流れが悪い場所になると、梱包材や建物の壁や床などに悪臭がしみ込んでしまい、常に嫌な匂いがする作業がしづらい場所になってしまいます。換気による空気の入れ替えは、こういった匂いの定着を防ぐことができます。 - リフレッシュ効果
最後は、倉庫内作業員のリフレッシュ効果です。換気設備がなく、空気がこもっている作業場では、休憩時に外に出た時、従業員が大きく息を吸い込みリフレッシュする姿が見受けられます。これは、倉庫内の空気が悪いから、外に出た時に自然とこういった行動に出るのだと思います。倉庫に換気設備がきちんとあり、新鮮でクリーンな空気の中で作業ができれば、常に良好な状態で作業ができるでしょう。つまり、換気設備は、従業員の健康を維持することができ、快適な環境を作れるので作業効率などにも良い影響を与えるはずです。
このように、倉庫などに換気設備を導入するということは、保管する物品はもちろん、そこで働く従業員の健康にまで好影響を与えると考えられます。
倉庫の換気対策について
それでは最後に、倉庫における換気対策は、どのような手段で換気を行えば良いのかについても簡単に触れておきましょう。倉庫などの大規模施設で換気を行う場合も、「窓を開けて、適当に換気扇を回しておけば良い」と考えてしまう方が多いのですが、倉庫などの非常に大きな空間を換気することは簡単なことではありません。
例えば、一般的なオフィスビルのことを考えた場合、ある程度の広さで部屋が間仕切りされていて、天井の高さもそこまでありません。そのため、窓や換気扇から壁までの距離が比較的近くなることから、一般的な換気システムや窓を開放することによって、室内の空気を効率的に換気することが可能です。これは、一般的なオフィスなどは空間が狭く、空気量が少ないのが理由になります。
一方、倉庫などの大規模施設のことを考えた場合はどうでしょうか?当然、一般的なオフィスなどとは比較にならないほど大きな空間になり、倉庫の中心から壁までの距離も非常に長くなることから、窓を開けたり、換気扇のスイッチを入れたとしても全体を換気するにはかなりの時間がかかってしまいます。さらに、倉庫や工場など、非常に大きな空間を持つ施設では、換気を行っているつもりでも、換気扇や窓の周辺だけ換気が行われる『ショートサーキット』と呼ばれる現象が起きやすくなってしまい、倉庫の中心部分などは換気扇を回していても、十分な換気が出来ず、空気がよどみがちになってしまうことがあります。
つまり、広い空間を持つ倉庫は、換気に必要な空気の量が桁違いに多いことから、窓や出入り口付近を開放するだけの『自然換気』と呼ばれる方法では不十分だと考えなければいけません。広い倉庫内全体を適切に換気しようと思えば、専用の機械を使用して、空間全体の気流をコントロールするなど、強制的に換気を行う必要があります。例えば、空間の広さに合わせて、業務用の強力な換気扇を使用して吸排気を行うといった方法が手っ取り早いでしょう。
ただし、多くの物資が所狭しと積載されている物流倉庫などでは、空気の通り道を確保するのが非常に難しい面がありますので、空気がよどみがちな場所などについては、強制的に空気を送るなど空間全体の気流を計算しなければいけません。したがって、大規模施設において、適切な換気を実現するためには、専門の業者に気流づくりから提案してもらうのがオススメです。
空気の流れを作って効率的な換気を
倉庫など、空間が非常に大きな施設において効率的な換気を行うためには、施設内に空気の流れを作ってあげることが非常に重要です。そして、施設内を効率的に換気するための設備として注目されているのが、HVLSファンと呼ばれる大型シーリングファンです。
倉庫の天井にこういった設備を取り付けておくことで、大量の物品が所狭しと置かれている物流倉庫などでも、きちんと空気の流れを作ってあげることができ、換気扇などによる換気が効率的になると期待できます。さらに、大型シーリングファンによって空気の流れを作ることが出来れば、適度に空気が撹拌されることになり、結露を防止し保管物品を守ることができます。
他にも、倉庫内で作業する従業員に向けて、常に緩い風が当たるようになり、作業中の体感温度を大幅に下げてくれることから、倉庫の熱中症対策としても非常に効果的です。
まとめ
今回は、倉庫における換気設備の必要性や、換気設備を導入することで得られるメリットなどについてご紹介してきました。この記事でご紹介したように、荷物を保管するだけの機能しかない倉庫については、建築基準法上の換気の基準については影響を受けないことから、換気設備などを導入する必要はありません。しかし、近年増えている、大型物流倉庫などを考えてみると、倉庫の中で仕分けや梱包作業を継続的に行うような施設が多く、倉庫の中で多くの人が作業する場所となっていますので、換気設備は必要と考えておいた方が良いでしょう。
特にコロナ禍の現在、従業員の健康と安全を守るためには、適切な空調設備を活用した常時換気又はこまめな換気の徹底が重要とされています。物流倉庫などでは、自動化による省人化が進められていますが、まだまだ人による作業に頼っている部分が多いですし、安全な作業環境を実現するためには、換気設備の導入が必要不可欠と考えるべきではないでしょうか。
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