倉庫建設の流れとポイント!関連する法律や補助金・助成金について解説
投稿日:2023.10.18
更新日:2024.11.19
お役立ち情報
倉庫建設は、一般の住宅とは建造物の種類が異なるため、設計や施工を請け負う業者とのやり取りや着工時の流れなどが大きく異なります。特に、倉庫のような営業目的の大規模施設は、さまざまな法律が関わってきますので注意すべきポイントも多岐にわたります。
そこで当記事では、はじめて倉庫を建てる方に向け、どのような流れで倉庫建設が進んでいくのか、また倉庫の建設に関係する法律や建設にかかるコストを軽減することができる補助金制度などをまとめてご紹介します。
Contents
倉庫建設の流れと各工程のポイント
ここでは、建設会社へ問い合わせをしてから実際に着工するまでの倉庫建設の大まかな流れと各工程での注意点を解説します。なお、実際に倉庫の建設を進める際の流れについては、工事を依頼する建設会社によって微妙に異なる部分もあるかと思います。以下で紹介する流れは、あくまでも一般的な流れとなります。あらかじめご了承ください。
STEP1 業者との打ち合わせ(計画・要望のヒアリング)
倉庫建設の第一ステップは、業者との打ち合わせとなります。「目的・予算・納期」など、倉庫を建設するまでに必要となる情報を細かくヒアリングすることで、建設計画を立てていきます。
一口に倉庫と言っても、低温環境が求められる冷蔵倉庫や、消防法で定められる危険物の保管を目的とした危険物倉庫など、さまざまな種類があります。倉庫建設では、「どのような用途で利用する倉庫なのか?」という目的により、その後の工程や事前に必要になる申請や関わる法律が変わってくるため、このステップは特に注意が必要です。
STEP2 立地計画
新たな倉庫の建設を計画している場合には、倉庫建設にふさわしい立地を絞り込むための立地計画も大切です。立地計画では、実際に倉庫建設の予定地に足を運び、土地の確認を行うケースもあります。なお、倉庫の立地計画では、以下のようなさまざまな面を考慮する必要があります。
- 用地条件
保管スペースを確保できる広い土地なのか、倉庫を建設しやすい平たい土地なのかを確認するのはもちろん、関連法令に従って倉庫を建設できる用地を探す必要があります。 - 交通アクセス条件
倉庫の用途によっては交通アクセスに関わる条件が重要です。特に物流倉庫の建設の場合、高速のICや空港、既存の倉庫など、交通アクセスの拠点となる場所との距離などをチェックしましょう。 - 人員確保、作業員の通勤条件
倉庫で働く従業員の通勤条件なども考慮しましょう。通勤が難しい用地となると、倉庫内作業員の確保で苦労する可能性が高くなります。
立地計画では、倉庫の用途を考慮したうえで、上記のようなポイントを確認しながら用地を決定します。
STEP3 基本計画・関係法令確認
基本計画では、倉庫の間取りやゾーニング、作業動線や倉庫内で使用する設備の配置などについて、大まかなイメージを決定します。そして、倉庫の種類に合わせて、関連法令を確認しながら、建物の配置やボリュームなどを決定します。
その後、基本計画をもとに、建物の構造や導入する設備、外観デザインなどについて、簡易的な設計を行ってもらうことになります。注意点は、建設する倉庫によって異なる法律が関係してくる可能性がある事です。倉庫建設の施工実績が少ない業者に相談した場合、思わぬ法律違反が発覚し、建設プロジェクトに悪影響が出る可能性もあります。したがって、倉庫などの特殊施設の建設は、類似建物の施工実績が豊富な業者に依頼することをおすすめします。
STEP4 概算見積りの確認と設計契約
STEP3で作成した基本計画をもとに、倉庫建設の概算工事費の見積りが作成されます。費用だけでなく、含まれる項目やその品質も確認し内容に納得ができれば、次のステップに進みます。
STEP5 具体的な設計と確認申請作業
設計契約締結後、基本設計及び実施設計を立てていきます。基本設計は、配置や平面、立面、断面図や構造、設備などの一般図面の作成が行われます。実施設計では、さらに各部の詳細を定めた設計で、平面や断面詳細図など各部の詳細設計図が作成されます。もちろん、構造や設備の計算書なども含まれます。
具体的な設計の完成後、建築確認作業となります。業者から提出される設計図などから必要情報を行政へ申請し、確認審査が行われます。確認審査は、数週間かかるケースなどもありますので、倉庫の建設計画は、事前の確認申請による日数を加味した計画を立てる必要があります。
STEP6 本見積・工事契約・工事着工
実施設計をもとに本見積もりを行い、同意の上、契約を結びます。その後、実際の倉庫建設工事がスタートするという流れになります。
倉庫建設に関連する法律について
それでは次に、倉庫建設に関係する法律をご紹介します。倉庫は、建築基準法第2条2項で定められている「特殊建築物」に当てはまる施設です。特殊建築物は、構造・設備が特殊で、不特定多数の人が利用したり、火災が発生した際に火が燃え広がりやすい場合があることから、立地条件や建物構造、防火設備などに関して厳しい規定が設けられています。
引用:e-Gov|建築基準法
ここでは、倉庫建設に関係する代表的な法律を解説します。
建築基準法
建築基準法は、倉庫に限らず、日本で建築する全ての建物に適用される法律です。建物の安全性や居住性を確保するため、さまざまな技術的基準や規定を定める法律です。
倉庫に係る主な建築基準法上の規制については、国土交通省がまとめている資料がありますので、以下を確認してください。
都市計画法
都市計画法は、土地の利用や開発、施設の整備といった街づくりに関する内容を定めた法律で、計画的な市街地開発のため、用途地域ごとに「建てられる建築物」と「建てられない建築物」を定めています。
倉庫は、さまざまな使用目的で建てられるのですが、実は倉庫の使用目的によって、同じ用途地域でも建てられるものと建てられないものがあります。倉庫建設時には、実際の倉庫建設予定地について、計画している倉庫の建設が可能なのかを事前に確認しなければいけません。
なお、倉庫新設と用途地域の関係性については、以前別の記事で詳しく解説していますので、そちらをご確認ください。
関連:新築で倉庫の建設を検討している方がおさえておきたい土地に関する注意点!
消防法
「消防法」は、 火災の予防・警戒・鎮圧や、災害などによる傷病者の搬送を適切に行うため、建築物などについて防火・消防上必要な規制を定めた法律です。倉庫建設時には、この消防法も関係してきます。
倉庫は、通常の建物に比べて、窓や扉などの開口部が少なく、建物の規模の割に収容人数が少ないことから、火災が発生した時には発見が遅れ、火災が大規模化する恐れがあります。そのため、消防法によって「消防設備を設置すること」、さらに定期的に消防設備の点検を行い、消防長または消防署長に届出をすることが義務付けられています。倉庫に係る主な消防法令上の規制については、消防庁が資料を公表していますので「倉庫(14 項)に係る主な消防法令上の規制について」をご確認ください。
なお、物流倉庫と危険物倉庫について、消防法との関連を以前詳しく解説していますので、以下の記事もご確認ください。
関連:物流倉庫新設の注意ポイント!消防法で定められた消防設備の設置義務について
関連:危険物倉庫とは?建設する際の基準と押さえておくべき法令をご紹介
なお、倉庫建設は、倉庫に保管する物品の特性により、上記以外のさまざまな法律・条令が関わってきますので注意しましょう。
倉庫建設に活用できる助成金制度について
それでは最後に、倉庫建設に活用できる助成金・補助金制度をご紹介します。倉庫のような大規模施設の建設は、やはり高額な初期コストがネックになります。助成金や補助金を上手に活用することができれば、問題となる初期コストの負担を大幅に軽減することができますので、どのような制度があるのかは事前に確認しておきましょう。
なお、助成金・補助金制度は、年度によってその内容などが変わる場合もあります。以下に紹介する制度は、2023年度に利用できていた補助金が主で、2024年度以降は継続されないものもあるかと思いますので、あらかじめご了承ください。
- 食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業(HACCP補助金)
倉庫の建築時に受給できる補助金で、HACCPに対応する施設を増やし、日本の食品や農林水産物の輸出を拡大させることが目的となっています。 - 先進的省エネルギー投資促進支援事業
倉庫の建築・改修時に受給できる補助金で、省エネ設備やシステムの導入により、倉庫のエネルギー効率を向上させることが目的です。補助金額の上限額は、対象となる事業により異なりますが、最小が100万円で、最大では15億円に達するなど、上限額が非常に大きい点が特徴です。 - 脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業補助金
エネルギー起源二酸化炭素の排出抑制及び温室効果ガスであるフロン類の排出抑制のため、冷凍冷蔵倉庫、食品製造工場、並びに食品小売店舗におけるショーケースその他の脱炭素型自然冷媒機器を導入する事業に要する経費の一部を補助する制度です。支給の上限額や交付率は、申請する企業の規模、条件によって異なりますが、上限額は最大で約5億円までであり、支給の交付率は1/3以下となっています。 - ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
民間企業等による、屋根等を活用した自家消費型の太陽光発電設備や蓄電池の導入を支援する補助金です。これにより、太陽光発電設備や蓄電池の価格低減を促進しながら、ストレージパリティ(太陽光発電設備と蓄電池を導入した方が需要家にとって経済的となる状態のこと。)の達成、ひいては地域の脱炭素化と防災性の向上を目的とした補助金とされています。ストレージパリティの達成が目的のため、太陽光発電だけでなく、蓄電池も補助対象となっている点が特徴です。
倉庫建設に活用できる補助金制度は、上記以外にもさまざまな制度があります。助成金・補助金制度を活用して倉庫の建設を検討している方は、是非弊社にお問い合わせください。倉庫の利用目的などをお伺いしたうえで、活用できる補助金制度のご案内や申請のサポートなども行っています。
まとめ
今回は、倉庫建設の一般的な流れと、倉庫に関連する法律や倉庫建設にかかるコスト負担を軽減してくれる補助金制度などについてまとめて解説しました。
倉庫建設は、単に大きな建物を建設するといった簡単なものではなく、「何のために利用する倉庫なのか?」によって関連する法律などが変わる非常に専門性が高い施工であることが特徴です。
したがって、倉庫の建設プロジェクトが立ち上がった時には、なるべく早く専門業者に相談し、専門家の視点からアドバイスしてもらうことがおすすめです。そうすることで、目的に沿った最適な倉庫が完成するだけでなく、建設にかかるコスト負担を大幅に軽減することも不可能ではありません。
弊社は、事前の調査から建設、アフターフォローや改修工事まで、さまざまな倉庫に関するサービスをトータルプロデュースいたします。
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